検索
特集

EVシフトでSUBARUが描く次世代のモノづくりの在り方電動化(2/3 ページ)

SUBARUが日立オートメーションやJR Automation Technologiesとともに次世代モノづくりの在り方や構想について語った。

Share
Tweet
LINE
Hatena

次世代のモノづくりと人口減少

 EVシフトで新工場を建設するなど生産現場を大きく変える機会を迎えた一方で、人口減少による労働力不足に直面している。次世代のモノづくりのコンセプトはどのように考えていくべきか。

 スバルの渡邊氏は“一度決めたらその通りにする”のではなく、柔軟性を持ってどうスピーディーに対応するかが重要だと語った。

 「これまでの自動車産業にはカイゼンや改革の積み重ねがある。いい面はもちろんあるが、サプライチェーン全体でカイゼンを繰り返してもやはりあちこちにムダが出てきてしまう。今回、新工場を作るに当たっては、全体の整流化を絶対にやらなければならない。モノや情報の流れを整えることを中核に置きたい」と渡邊氏は新工場だからこそ着手できる取り組みに言及。

 ただ、長年の積み重ねがあることで、発想が飛躍できないという課題もあるという。人の意識や考え方、文化が積み重ねられてきたことによるものだが、今回の新工場建設を通じて大きく変えたいのだという。「スバルだけでなく、取引先や販売店などと同時並行的に議論し、解決することで、人や工程を起点にしたモノづくり革新を実現したい。いかに上流から変えられるかがポイントだ」(渡邊氏)

 そこで、工程を起点にサプライチェーンやエンジニアリングチェーンの全体を俯瞰し、効率化と価値提供をいかに両立できるかが求められる。スバル社内では「トリプルハーフ」をテーマに、生産工程数や開発日数、部品点数を半減させることを目標に掲げ、それを前提にモノづくりを変えていく考えだ。

 また、関係者が広く参加した同時並行的な議論に向けて進めているのが「1つのスバル化」だ。製造や開発、取引先も含めて同時に、企画や設計、生産準備もやれるような環境を整えている段階だという。これまでは群馬県に拠点が集中していることで小回りが利くのがスバルの特徴だったが、規模が拡大する中で分業化が進んできた。一つのスバル化を目指して分業化状態を変えていき、モノづくり革新と価値づくりで世界最先端を目指そうと取り組んでいる。

人口減少を支えるテクノロジー

 日立オートメーションの新井氏は、高度シミュレーションツールやAI(人工知能)を活用したデジタルエンジニアリングなどフロントラインワーカーの革新によって、AIロボットが作業者の能力を拡張することが、スバルの「トリプルハーフ」の実現に貢献すると自信を見せる。

 ラインビルディングとデジタル活用を組み合わせることで、これまでは独立した作業だったものが、メカや電気制御のそれぞれの設計や工程がシームレスに連動できるようになる。各工程の効率化や精度向上が図られ、出荷前の試験や現地の立ち上げなどの期間も短縮できると考えている。

 新井氏は生成AIにも期待を寄せる。経験者のノウハウをデジタルに取り込んで、品質向上や見える化、技能伝承に活用していけるという。「工程の最後には、リスクの網羅的な洗い出しなど仕様書の中に行間で表せていないことが出てくる。これを熟練者が最後の砦として守ってきたが、熟練者も年々少なくなってきている。生成AIが、熟練ならではの気付きや教えを支援ツールとして取り込んで活用できれば、スバルが目指す次世代のモノづくりに貢献できるのではないか」(新井氏)

 JR Automation Technologiesのデグラーフ氏は、北米でのAIやデジタルの活用事例を紹介した。労働力の不足は北米にも共通の課題で、デジタルやAIによって生産現場を拡張することは重要だとしている。北米では、AIツールやデジタルツールを使ってサービス提供に取り組む顧客がいるという。アフターサービスでのDXやAI活用が進められており、ドキュメンテーションの最適化やフォルトツリー解析、予防保守、遠隔や現場での継続的支援などを提供している。予防保守では、パラメータを基にした注意すべき部位の提示やリアルタイムなデータの収集と可視化による意思決定の支援が行われている。

 スバルの渡邊氏も、AIやデジタルは徹底的に活用していく考えだ。「世界最先端を目指す」という目標の中でもそれがポイントになるという。「革新といっても、積み重ねが長く大きいのでなかなか抜け出せない。思い切って突き抜ける意味でも、世界最先端とは何かを考え続けることが重要だ。一方で、変革を支えるのは人だ。変革をリードする人材をどう育てていくか、会社としてもさまざまな取り組みで、個の成長と組織の変革を進めていく」(渡邊氏)。

 自動車産業はこれまで以上に厳しい競争に置かれている。渡邊氏も「全て自前でやるのは難しい。どこに注力していくのか、どうやって見極めていくかが重要だ。いかに協調しながら競争するか」と語った。スバルでは「イノベーションハブ」という拠点を群馬県内に作った。開発部門の建屋を更新するタイミングで、設置した拠点で、取引先や生産技術、調達などさまざまな人が同じフロアの同じ部屋に集まって開発できる環境を用意した。経営陣の議論もここで行われているという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る