ISO/ASTM 52920の要求事項と準拠のチェック〜何が書かれていて、どう監査するのか:AMの品質保証とISO/ASTM 52920(7)(1/2 ページ)
本連載では、AM(Additive Manufacturing)における品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、規格には実際にどのようなことが書いてあるのかなどを見ていく。
品質保証は製造業において重要な要素です。近年、Additive Manufacturing(AM、3Dプリンティング技術)の普及が進み、量産への活用が始まったことにより、AMにおいても品質保証の重要性が高まっています。
AMは従来の製造プロセスとは異なる方法で製品を生産します。その結果、品質保証のアプローチも従来製法と異なり、新たな課題に直面しています。そこで本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格 ISO/ASTM 52920について解説していきます。
※執筆にあたり参照しているISO/ASTM 52920は、執筆時点での現行版であるISO/ASTM 52920:2023です。
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連載トピック
- 品質保証
- AMの品質保証
- AM品質保証の規格 ISO/ASTM 52920
第4回から前回の第6回までに、3つ目の連載トピックであるISO/ASTM 52920(以下、52920といいます)について見てきました。52920について振り返ってみましょう。
- 52920は、AMで品質保証するためにちゃんとしなければならないことについて規定している(第4回)
- 52920という規格書は、AMの製造販売側・調達側のどちらからも業務に活用できる(第5回)
- 52920に準拠したAM製造サイトの品質保証の実力を証明する(認証を取得する)のは製造側(第5回)
- 52920の規定の適用範囲は、AMの品質保証に関わるところ全部(第6回)
今回は、実際の規格にはどのようなことが書いてあるのか、要求事項に業務を準拠させるための読み方、認証取得の際の監査はどのように実施されるか、を見ていきましょう。
実際の規格にはどのようなことが書いてあるのか
では早速規格の中身を見てみましょう。
例えば、AM製造プロセスの中の、原材料マネジメントプロセスの中の、原材料管理プロセスについての要求事項があります。
要求事項は上の図のように、大きな分類から、個別の分類へと整理されて書かれています。
例えば、箇条7はAMシステム運用について、その中の箇条7.7はAMシステム運用の関連プロセスについて、さらにその中の箇条7.7.3は原材料マネジメントについて、そしてその中の箇条7.7.3.1が原材料管理について規定しています。
7.7.3.1の規定を日本語にしてみると下記のような感じになります。
7.7.3.1 原材料管理
部品メーカーは、原材料が定義された仕様を満たし、その後、トレーサビリティーを確保するために適切にラベル付けされるようにするための指示を確立しなければならない。
ここで、文末が「しなければならない」とあるので、この規定は要求事項である、ということになります。他にも「したほうがよい」という推奨事項や、「してもよい」(許可事項)など、規定にはいくつかの種類があります。
補足: 規格書の読み方
規格書は、規格書の書き方の規格に沿って書かれています。
規格書の文章は独特で分かりにくいこともありますが、言葉づかいや文書の構成など、基本的な規格書の読み方を理解してから読むと、理解しやすくなります。また、52920のように英語の規格では、同様に規格独特の英語が使われているので、先に確認しておく必要があります。
52920については日本語で解説しているeラーニングもありますので、日本語でいったん概要をつかんでから実務で必要になった部分を原本に当たる、というのもお勧めです。
実務では、まずは自社のプロセスが要求事項を満足しているか、という視点でチェックし、規格への準拠を進めていくことになります。
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