アマダが製造DXの加速で生産能力増強、変動に強い生産体制へ:スマート工場最前線(2/2 ページ)
アマダがDXを活用した製造改革を推進している。主力工場の富士宮事業所における新たな生産方式の導入やサプライヤーとの連携強化など内容は多岐にわたる。同社の取り組みを追った。
新生産管理システムで間接業務効率化、サプライヤー向けポータルサイトも
これまでアマダでは独自の統合生産情報システムとして「AM-HITS(AMADA-High grade Information Technology System)」を構築してきた。生産座席表を基軸とするこのシステムは、工場の生産能力枠が座席として表示されており、受注が入った機械が登録され、シリアルナンバーで管理される。
生産座席表から日々の組み立て、加工日程が自動生成され、生成された日程に基づいて生産管理システムの「ATS」がMRP(資材所要量計画)による生産計画の立案、BOM(部品表)を基にした部品手配表の作成、発注、在庫管理を行う。
ただ、近年はユーザーのニーズの高度化により商品仕様の多様化が進展。生産管理では仕様情報や生産計画の確認、修正に多くの工数を要していた他、調達においてもサプライヤーへの手配情報の修正や納期確認など双方に大きな負担が生じていた。製造現場での製造進捗、帳票類の管理が煩雑になっていた。
「これらの変化に対して、従来の取り組みに加えて開発と製造が同居している富士宮事業所で、販売から生産計画、調達、製造につながるサプライチェーンマネジメント、開発から製造サービスにつながるエンジニアリングチェーンマネジメント技術の両軸からDXを活用した改革を開始した」(アマダ 上席執行役員 生産本部長の甲斐不二雄氏)
今回、従来のシステムを進化させた新たな生産管理システム「APEX(AMADA Production Environment Transformaion)」によって、間接業務の大幅な効率化を実現した。
さらにエンジニアリングチェーンの再構築に向けて、設計BOMに製造BOM、サービスBOMを連携させた統合BOMを新たに構築し、同一プラットフォームによる技術情報の一元管理と見える化が可能になった。
生産管理では設計情報に基づいた確実な製造手配、ユーザーの要求仕様である確定仕様書の情報から、設計仕様情報を経由し、マシンの生産準備に必要な手配情報が生産座席表に自動登録される。実際に製造使用したシリアルごとのBOMから、マシンごとの保守用の3Dパーツリストを自動生成することもできるようになった。
調達においては、サプライヤーとの連携強化に向けて「アマダサプライヤーポータルサイト」を開設した。アマダの生産管理システムから生産計画や発注情報、在庫情報などをリアルタイムに共有する。技術情報、品質情報、価格情報などもセキュリティの担保された環境で共有する。
ポータルサイトは現在、5社が利用している。その中の1社である関東精工(静岡県富士宮市)では、アマダのレーザーマシンに使われるカバーなどを製造している。
関東精工 情報処理室 室長の望月公博氏は「これまで図面を手に入れるには当社側、アマダ側でいくつもステップがあって、1、2日かかっていた。それが、ポータルサイトに入って自分ですぐにダウンロードできるようになった。必要な時にすぐに取れるようになり、とても便利になった」と語る。同社 業務部 業務課長の花田巧氏も「従来はアマダからの支給品がいつ発送されたのか当社側では分からない状態だったが、ポータルサイトに入れば支給品の発送日などアマダ側の情報を自由に見ることができる」と話す。
ポータルサイトの利用企業は最終的に50社程度まで拡大する予定の他、海外展開も見据えている。サプライヤーが導入しているアマダ製の生産管理ソフトや製造DXソリューションとの連携も予定している。
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