3D CADをマウスなしで動かす時代は来るのか?:テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(5)(1/3 ページ)
連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第5回のテーマは「3D CADをマウスなしで動かす時代は来るのか?」です。
通常、CADの操作はマウスを使って、コマンドを選択して線を描き、3D CADであれば立体を作成します。マウスを使用して、形状に近づいたり、離れたり、視点の向きを切り替えたりなど、さまざまな操作が可能です。
その一方で、タブレット端末(ペンやタッチ操作)で動作する3D CADも登場しています。さらに、VR(仮想現実)/AR(拡張現実)/MR(複合現実)空間で3Dモデリングが行える機能やソフトウェアなどの開発も進んでいます。
そこで、今回は「3D CADをマウスなしで動かす時代は来るのか?」をテーマに、マウスを使わずに3D CADでモデリングできるソフトウェアやアプリケーション(以下、アプリ)をいくつか取り上げ、その可能性について考えてみたいと思います。
ペンやタッチで3D CADを操作、タブレット端末によるモデリング
実は、筆者がMONOistで執筆を始めたばかりの2016年11月に、設計者の新しいワークスタイルを探ることを目的とした連載の中で、Microsoftの「Surface Pro 4」と「Surface Book」を用い、Surfaceペンで3D CADを操作するという試みを紹介したことがあります(関連記事:秋を満喫しながら、タブレットPC「Surface」で3D CADをガチで使ってみた)。
その当時のコメントとして、筆者は「もちろん、操作に慣れることが必要ですが、紙とペンでスケッチしているような感覚でモデリングできました」と紹介していました。加えて、「寸法などの数値も音声入力できるようになれば、作業がより楽になりますし、形状を選択すると必要なコマンドが表示され、ペンでドラッグするだけで形状が修正できるなど機能が充実してくれば、設計者はより楽に設計の仕事ができるようになるでしょう」とも述べていました。
2024年現在、昔と変わらずマウスを使用して3D CADを動かすのが一般的ですが、形状をクリックすると必要なコマンドが表示されたり、ドラッグで形状を修正できるようになったりと、3D CADは着実に進化しています。
Shapr3D
タブレット端末用の3D CADとして、初めて登場した製品はおそらく「Shapr3D」ではないかと思います。2016年に「iPad」向けアプリとしてリリースされ、現在はWindowsやmacOSでも使用できるようになりました。図2は、iPadで最初にアプリを起動した時に「どのデバイスでモデリングをしたいか?」と聞かれている画面です。選択肢として、「Apple Pencil」「マウスとキーボード」「トラックパッドとキーボード」がありますね。
通常、3D CADはスケッチを描いてフィーチャー機能で立体を作成していきますが、Shapr3Dでは、Apple Pencilを使用して絵を描くようにスケッチを描き、ドラッグ操作で厚みを付けて立体を作成できます。距離や角度などのサイズの入力は、数値入力する画面が表示されるためスムーズに行えます。また、視点の回転や拡大/縮小などは画面のタッチ操作に対応しています。
面にスケッチを描きたい場合には、面を指でダブルタップするとスケッチを新規で作成できます。また、立体形状のエッジ(稜線)をApple Pencilで選択し、矢印を内側にドラッグすると「面取り」、外側にドラッグすると「フィレット」が作成できるなど、非常に直感的にモデリング作業を進められます。
作成したスケッチやフィーチャーの履歴は保存され、後からサイズの変更なども行うことができます。以前、Shapr3Dを試しに使ってみた際は、履歴は保存されなかったと記憶していたのですが、どうやら機能が強化されているようですね。
マウスを使用する通常の3D CADと比べると機能がややプアで、機械設計業務に使用するのは難しいかもしれませんが、今後の機能強化によってタブレット端末で機械設計ができる時代が来るかもしれません。
Shapr3Dは有料版だけでなく、機能は制限されますが無料版もありますので、ご興味があれば、ぜひ一度お試しください。
Webブラウザ版3D CAD
他にも、タブレット端末で3D CADを操作できるものとして、Webブラウザで動作する3D CADがあります。タブレット端末専用の3D CADではないため、マウスやキーボードを使用しないと(タッチやペン操作だけだと)使いにくい部分がありますが、外出先での3Dデータの確認や簡単な修正などを行う程度であれば、十分に使えると思います。Webブラウザで動作する3D CADについては連載第2回「Webブラウザで動作する3D CADに注目してみた」で取り上げているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
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