ウイスキー製造工程のCO2を99.5%の高純度で回収、サントリーや東京ガスなど:脱炭素
サントリーホールディングス、東京ガス、東京ガスエンジニアリングソリューションズは、サントリー白州蒸溜所において、固体吸収法を用いたCO2回収実証試験を行い、蒸溜工程で発生する低濃度のCO2を99.5%以上の高純度で分離、回収することに成功した。
サントリーホールディングス、東京ガス、東京ガスエンジニアリングソリューションズの3社は2024年9月24日、サントリー白州蒸溜(じょうりゅう)所において、固体吸収法を用いたCO2回収実証試験を行い、蒸溜工程で発生する低濃度のCO2を99.5%以上の高純度で分離、回収することに成功したと発表した。固体吸収法によるCO2の高純度回収の取り組みは「国内の酒類/飲料業界では初」(サントリーホールディングス調べ)だという。
カーボンニュートラルに向けた社会的要請が強まる中、工場などから排出されたCO2を分離して回収し、有効利用する技術であるCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization)にも大きな期待が集まっている。その1つの代表的技術である固体吸収法は、CO2を選択的に吸収できるアミンを多孔質支持体に担持した固体吸収材を用いてCO2を分離、回収する手法である。
今回採用した固体吸収法は、CO2の分離/回収のプロセスを約60℃の低温で実現できることが特徴だ。将来的には工場などで未利用の低温廃熱の活用により、低エネルギーでの分離、回収を行えるようにすることが期待されている。
今回の実証では、東京ガス、東京ガスエンジニアリングソリューションズが、地球環境産業技術研究機構(RITE)、三浦工業と共同開発した小型のCO2分離/回収装置を使用した。この装置は、RITEが開発した固体吸収材を用いて、三浦工業が設計、製作している。
今後は、回収したCO2を現地で有効利用するCO2の資源循環(オンサイトCCU)について検証していく方針だ。また、実証の結果を踏まえ、サントリーグループとしてCCUの活用拠点や生産工程についても検討を進めていくとしている。
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