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f電子を含む希土類化合物で強磁性体並みの異常ホール効果を観測:研究開発の最前線
神戸大学は、f電子を含む希土類化合物で、無磁場で起電力が生じる異常ホール効果の観測に成功した。異常ホール伝導度は強磁性体並みに大きく、f電子の特徴を生かした次世代の磁気デバイスへの応用が期待される。
神戸大学は2024年9月5日、f電子を含む希土類化合物で、無磁場で起電力が生じる異常ホール効果の観測に成功したと発表した。異常ホール伝導度は強磁性体並みに大きく、次世代の磁気デバイスへの応用が期待される。
研究では、希土類元素のセリウム(Ce)を含む反強磁性的物質Ce2CuGe6を用いた。Ceは最外殻に磁性の起源となるf電子を有し、このf電子が反強磁性構造を形成している。Ce2CuGe6の異常ホール効果では、わずかに存在する自発磁化により反強磁性構造が反転。同時にホール電圧も反転することが明らかとなった。これは主に強磁性体でのみ確認されていた現象だ。
(左)強磁性体の異常ホール効果。大きな自発的な磁化が存在し、磁場によって磁気モーメントの向きを制御できる。その際、ホール電圧の正負も反転する。(右)実際のCe2CuGe6の異常ホール効果。わずかな自発磁化が存在するため反強磁性構造が反転し、その反強磁性構造を起源とするホール電圧も反転する[クリックで拡大] 出所:神戸大学
f電子は、スピン−軌道結合という異常ホール効果の増強に必要な量が大きく、伝導電子になりにくい性質を持つ。そのため、遷移金属が固体中で持つd電子とは異なる仕組みで、異常ホール伝導度が増大すると考えられる。
異常ネルンスト効果を示す可能性も視野に、f電子の特徴を生かした磁気メモリや熱電材料などへの展開が注目される。
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