太陽光と海水から水素を生成する酸化チタン光触媒を開発:研究開発の最前線
東京都立産業技術研究センターは、太陽光と海水から水素を生成する光触媒の酸化チタンにおいて、その格子内に安定してTi3+を増加させる技術を開発した。紫外光−可視光の照射から30分で、安定的にTi3+を固定できた。
東京都立産業技術研究センターは2024年9月6日、太陽光と海水から水素を生成する光触媒の酸化チタンにおいて、その格子内に安定してTi3+を増加させる技術を開発したと発表した。慶應義塾大学、フォトジェンとの共同研究による成果だ。
海水を太陽光で分解して取り出すグリーン水素は、クリーンエネルギーとして期待されている。今回の研究では、安定かつ安価な光触媒材料として注目される酸化チタンの格子内に、還元種のTi3+を固定させる手法を開発した。
まず、エタノール溶媒中で直径0.3mm程度のビーズを使って酸素欠損酸化チタンを粉砕処理すると、粉砕に続いて凝集が発生した。この作用を活用し、高い比表面積を維持した状態で安定的にTi3+を格子内に固定することに成功した。この手法は、劣化が起こりにくい非貴金属系の光触媒材料の開発に適用可能だ。
照射光として、紫外光−可視光を照射したところ、開始約20分後に水素が生成され、30分経過すると水素生成速度が安定した。元の酸化チタンと比較し、水素生成速度は16倍まで上昇した。
可視光だけでは水素は生成されなかったが、紫外光と可視光の同時照射では紫外光のみと比べて9倍まで水素生成速度が向上した。また、0.005vol%の極微量のエタノールを加えることで、紫外光−可視光を照射時の人工海水から、添加前に比べて5倍安定して水素を生成できた。このことから、塩素イオンの犠牲試薬として、微量エタノールが作用をサポートできると考えられる。
同技術により、太陽光への応答や水素生成能力が大きく向上した。今後、さらなる活性上昇を図り、有効な反応場の拡大や改質などに取り組み、太陽光による海水分解の実用を目指す。
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