カーボンナノチューブの原子の並びを制御できる構造制御合成法を開発:研究開発の最前線
東北大学らは、カーボンナノチューブの新しい構造制御合成法を開発した。多種類の元素を混合した触媒を用いて、炭素原子1つ1つの並びであるカイラリティの制御合成に成功し、95%以上の高純度を達成した。
東北大学は2024年9月3日、カーボンナノチューブ(CNTs)の新しい構造制御合成法を開発したと発表した。多種類の元素を混合した触媒を用いて、炭素原子1つ1つの並びであるカイラリティの制御に成功した。理化学研究所、東京大学との共同研究による成果だ。
研究では、ニッケル(Ni)にさまざまな元素を追加した触媒によるCNTs合成実験を網羅的に実施し、特定のカイラリティを選択的に合成できる組み合わせを探索した。
その結果、Niにスズ(Sn)と鉄(Fe)を混ぜた三元系触媒が(6,5)カイラリティCNTsを高純度で合成できることを発見。合成温度や前処理などの条件を最適化し、95%以上と高純度の(6,5)カイラリティCNTsを直接合成できた。
(a)二元系触媒(Ni+X)と(6,5)CNTs純度の関係。二元系触媒に用いた第二因(X)の原子番号に対する(6,5)CNTs純度のプロット図。(b)三元系触媒(NiSn+Y)と(6,5)CNTsの蛍光(PL)強度(∝合成量)の関係。第三因子(Y)に対する(6,5)CNTsのPL強度依存性。(c−e)NiSnFe三元系触媒を用いて最適合成条件で合成したCNTsの(c)蛍光−励起(PLE)マップ、(d)紫外−可視−近赤外吸収スペクトルと(e)そのフィッティング結果[クリックで拡大] 出所:東北大学
NiのコアとNiOのシェルに分かれたコア/シェル構造を持つNiSnFe触媒ナノ粒子は、Ni+Snのコア部の一部にNi3Snという特異な結晶が存在する。密度汎関数理論(DFT)計算などから、Ni3Sn(0001)面の特定の原子配列がカイラリティの決定に関与していることが示唆された。
また、高い純度の(6,5)CNTsには、束状に集合した(6,5)CNTsバンドル構造が見られ、孤立した(6,5)CNTsより蛍光発光寿命が20倍以上長寿命化することも判明した。
超高純度(6,5)CNTsから構成された束状構造の(a)低倍率と(b)高倍率の透過型電子顕微鏡像。(c)(b)のコントラストをa−bラインで切り出した図。(d)シミュレーション解析から推測した(6,5)CNTs束状構造のモデル図。(e)孤立した(6,5)CNTsと(f)束状(6,5)CNTsのPL寿命特性[クリックで拡大] 出所:東北大学
超高性能半導体デバイスの実用化においては、カイラリティが1種類の均質なCNTsを用いることが望ましい。しかしCNTsのカイラリティ制御は非常に困難で、特定のカイラリティを直接合成する方法、中でも3種類以上の触媒金属を用いた合成方法はこれまでほとんど研究されていなかった。
今後、多元系触媒の研究を進めることで、(6,5)以外の単一カイラリティも合成できる可能性がある。一層のグラフェンシートから構成される単層CNTsを用いた次世代半導体デバイスへの展開が注目される。
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