生産現場の言葉の壁を乗り越えろ 三菱電機が開発中の「翻訳サイネージ」:製造ITニュース
三菱電機は外国籍従業員への正確な情報伝達を支援する「翻訳サイネージ」のプロトタイプを開発したと発表した。
三菱電機は2024年9月10日、外国籍従業員への正確な情報伝達を支援する「翻訳サイネージ」のプロトタイプを開発したと発表した。多言語を同時に翻訳するインタフェースを通じて、母国語が異なる従業員に同時に情報を伝えるシステムを提供する。
朝礼などの情報伝達を効率化
翻訳サイネージはあらかじめ用意した日本語原稿をPC上のインタフェースに入力することで、英語やポルトガル語、タガログ語、ベトナム語など17カ国語に翻訳し、サイネージに同時に表示するシステムだ。翻訳された文章はサイネージ上で一定のスピードで自動的にスクロールする。日本語に不慣れな従業員に対して、その日の作業や安全性に関する情報を高い正確性をもって伝達できる。
サイネージ上の情報と連動する、専用のスマートフォンアプリも提供する。情報を伝える側である生産現場の責任者は、手元のスマートフォンでサイネージ上の情報の進み具合を確認することで、口頭でスムーズに説明が行える。原稿にない内容を話す場合は、スマートフォンの音声入力機能を使うことで翻訳文を作成、表示できる。
翻訳エンジンにはGoogleが提供するサービス「Google 翻訳」を採用している。専門用語などは辞書機能で登録しておけば、翻訳精度を向上また、スマートフォンやサイネージなどの機器は市販品のもので構成可能だ。
三菱電機は翻訳サイネージの実証実験を、外国籍従業員の比率が比較的高い同社の群馬工場(群馬県太田市)で2023年12月から行っている。現時点では、生産現場から「朝礼などでの情報伝達が効率化した」「(注意事項の徹底により)不具合発生時にしっかりと作業を止めて責任者を呼ぶ割合が増えた」という声が出ているという。
翻訳サイネージの特徴の1つに「折り返し翻訳機能」がある。日本語から他言語に翻訳した際に、再度日本語に翻訳した場合のテキストを表示する。他言語への翻訳結果が、元の日本語原稿で意図したものと相違がないかを確認できる。なお、再翻訳に当たっての誤訳発生は「実証実験の中で群馬工場での外国籍従業員に確認したところ、ほとんど発生していないことを確認している」とした。
これまで朝礼などで外国籍従業員にメッセージが伝わっていないと見受けられたときは、個別にジェスチャーなどを用いて説明するなどの対応が必要だった。既存の翻訳アプリを用いることもあるが、翻訳の正確性や製造業特有の専門用語への対応度合いについて不安が残る場合もあった。翻訳サイネージはこうした課題の解決に貢献する。
翻訳サイネージの開発を行った三菱電機 統合デザイン研究所長の長堀将孝氏は「翻訳サイネージは当社が推進するサステナビリティ経営の中でも、『安心・安全』『インクルージョン』『ウェルビーイング』に寄与する開発だと考えている」と説明する。日本国内での外国籍従業員の数が増加する中で、言語の壁による生産品質やモチベーションの低下などを防ぐことを目指す。
三菱電機が生産現場でのコミュニケーション支援に関連するサービスを提供するのは今回が初めてとなる。2025年度以降の事業化を目指し、外国籍従業員への作業指導や受け入れ教育、海外拠点の立ち上げ指導にも展開していく予定。
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