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業況はコロナ禍以前の水準に回復 今後は無形固定資産への投資が重要にものづくり白書を読み解く(2)(6/6 ページ)

日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。

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営業利益率と労働生産性の向上には、無形固定資産への投資が重要

 直近1年間における大企業と中小企業の設備投資(有形固定資産/無形固定資産)の有無を比較すると、中小企業の無形固定資産投資は、大企業と比べて活発ではない様子が分かる(図25)。しかしながら、近年では無形固定資産投資の重要性がたびたび取り上げられており、直近1年間の営業利益率の水準で設備投資の傾向を比較すると、無形固定資産への投資が活発な企業群ほど、営業利益率が高い傾向にある(図26)。

図25:直近1年間の設備投資(有形固定資産・無形固定資産)の有無
図25:直近1年間の設備投資(有形固定資産・無形固定資産)の有無[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図26:無形固定資産取得額と売上高営業利益率の関係(2017年度〜2021年度)
図26:無形固定資産取得額と売上高営業利益率の関係(2017年度〜2021年度)[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 国内製造業の労働生産性の上昇率をみると、2001年から2010年にかけては平均3.61%だったが、2011年から2019年は1.62%と半分以下に低下している。また、2011年から2019年の労働生産性上昇率のうち、「無形固定資産」の寄与は1割強にとどまっている。主要な諸外国は米国の7割強を筆頭に各国とも2割以上であり、日本はその半分程度だ(図27)。これらを踏まえて2024年版ものづくり白書では、日本の製造業は無形固定資産の投資や活用によって、さらなる利益率の向上や労働生産性の上昇につなげていける余地があると指摘している。

図27:労働生産性上昇率の寄与度分解
図27:労働生産性上昇率の寄与度分解[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

中小製造業はオープンイノベーションに消極的

 企業価値の向上や競争力の強化につながる取り組みとして、オープンイノベーションに注目が集まりつつある。大企業では全体の約8割がオープンイノベーションに「取り組んでいる」または「取り組んでいないが検討中」という状況の一方で、中小企業では全体の約7割が「取り組んでおらず、今後も取り組む予定はない」との回答だった。中小企業においては外部リソースと連携することで、イノベーションを実現しようとする企業はまだ限定的といえる(図28)。

図28:オープンイノベーションの取組状況
図28:オープンイノベーションの取組状況[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 製造事業者のオープンイノベーションの取り組み相手をみると、「大学・公的研究機関」が最も多い(図29)。その理由としては、「先進技術・ノウハウの獲得」や「新たなアイデア・発想の獲得」が最も多く挙げられている(図30)。

図29:オープンイノベーションの取り組み相手
図29:オープンイノベーションの取組相手[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書
図30:オープンイノベーションの取組相手を選んだ理由
図30:オープンイノベーションの取組相手を選んだ理由[クリックして拡大] 出所:2024年版ものづくり白書

 本稿では、国内製造業の製造業の業況が改善していること、その一方で労働生産性の上昇率は低下しており、回復のカギが無形固定資産への投資や活用にあることなどを確認した。第3回では、ものづくり企業における人材の育成や雇用状況、デジタル人材の育成状況について紹介したい。

⇒その他の「ものづくり白書2024を読み解く」の記事はこちら

筆者紹介

長島清香(ながしま さやか)

編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。


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