1000台規模の自動搬送ロボットを同時制御するエンジン、量子アニーリングを活用:無人搬送車
シャープは東北大学と共同で、量子コンピューティング技術の一種である量子アニーリングを応用し、1000台規模の自動搬送ロボットを同時制御可能な計算エンジンの開発に成功した。
シャープは2024年9月2日、東北大学と共同で量子コンピューティング技術の一種である量子アニーリングを応用し、1000台規模の自動搬送ロボットを同時制御可能な計算エンジンの開発に成功したと発表した。
シャープでは、自社および他社向けの生産設備の開発で培った技術をベースに、自動搬送ロボットの開発を20年以上前から手掛けており、独自の集中制御システム「AOS(AGV Operating System)」により、従来は最大500台までの自動搬送ロボットの同時制御を実現していた。
そして、物流業界で深刻化する人手不足の解決をテーマに、量子コンピューティング分野における研究や教育の実績を持つ教育機関である東北大学と、自動搬送ロボットの多台数同時制御技術に関する共同研究に、2023年から取り組んできた。
今回、量子アニーリングの計算方法を汎用コンピュータ上で疑似的に再現するシミュレーテッド量子アニーリング技術の活用により、従来は計算量が膨大で実現が困難だった1000台規模の自動搬送ロボットの最適経路を生成する計算エンジンの開発に成功した。
あくまで、シミュレーション上での成功であり、今後は実用化に向けて、性能評価や実証実験などを通じて、高性能化に取り組む。
両者はこのエンジンにAI(人工知能)を組み合わせた、大規模物流倉庫向けアプリケーションの研究も開始しており、AIを用いて商品の需要予測から入出庫管理、商品、作業者配置までを最適化することで、入出庫フロー全体の生産性を向上するソリューションの開発を進める。2026年度中に性能評価や実証実験を行い、2027年度内の実用化を目指す。
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