「KINTOはSDV時代のトライアル」、アップグレードの利用拡大へ:モビリティサービス(2/2 ページ)
トヨタグループのKINTOは、ハードウェアとソフトウェアのアップデートに対応したサブスクリプションサービス「KINTO Unlimited」の利用者拡大に力を入れる。
ハードウェアのアップグレード
KINTO UnlimitedのUグレードはアップグレード前提の設計のため、後から装備のハードウェアを追加できる。アプリからアップグレードしたい装備を注文すると、大画面のディスプレイオーディオや、リモート機能付きの駐車支援機能などを納車後に追加できる。デジタルキーや6スピーカーなど、アイテムが追加されている。ハードウェアのアップグレードを、プリウスのUグレードだけでなく、ヤリスやヤリスクロスの同グレードにも提供する。
現状では、プリウスのUグレードのユーザーでハードウェアアップグレードを利用した車両は2%にとどまる。「発売から1年半で2%をどう評価するかはまだ難しいが、アップグレード利用者からは好評。これをどう広げていくか。アップグレードをより一般的なサービスに育てたい。1年で2%、5年で10%と考えると、通常のオプションの平均的な装着率と同等だが、少ないという印象はある。KINTO FACTORYではアイテムを追加すると装着率が伸びるので、魅力的な商品を継続して打ち出すことがカギになりそうだ」(小寺氏)。
Uグレード向けのソフトウェアのアップデートは2025年ごろから提供する。
コネクテッドサービスの進化
Uグレードのコネクテッド機能では、安全で燃費のよい運転のトレーニングや、使用状況に合わせたメンテナンスの案内などを行う。
トレーニングに関しては、車線の中央を走るライン取りや、ふらつかない運転、スムーズなアクセル操作など、運転技能向上に資するアドバイスの内容を拡充した。個人の運転データに対して月に1度、評価をフィードバックする。
この「コネクティッドドライブトレーナー」を利用すると、事故の規模が小さく、修理費が安く抑えられるため事故1件当たりの保険金が少なくなる傾向にあるという。また、コネクティッドドライブトレーナーを利用しない場合に比べて、利用頻度が月1回、週1回と増えるにつれて燃費も改善する効果が出ているようだ。「データを深掘りし、コネクティッドドライブトレーナーが貢献する仕組みを明らかにできれば、さらなる展開を視野に入れる」(小寺氏)
さらに、コネクティッドドライブトレーナーをKINTO以外の一般販売の車両にも展開できるよう、トヨタ自動車とも連携していく。
今後は、運転データの蓄積にブロックチェーン技術を活用する。コネクティッドドライブトレーナーで安全運転が認定されたユーザーにブロックチェーン技術を使った証明書を発行する実証実験を現在進めている。安全運転のデータをドライバーにひも付けて記録すれば、自動車保険やリース価格の低減にも活用できる可能性があるとしている。また、整備履歴など車両にひも付く情報もブロックチェーン上に残せれば、中古車として流通させる際にも役立つと見ている。
ハードウェアアップグレードと同様に、コネクテッドサービスなどソフトウェア面の機能もユーザーを広げていくことが課題となる。
トヨタに還元される機能
この他にも、KINTO発で生まれた機能が一般販売の車両に広がろうとしている。その例がAR(拡張現実)によるクルマの機能の案内「これなにガイド」だ。KINTOの独自開発だが、トヨタ自動車から他の車種にも展開できないかと要望が出ているという。
スマートフォン向けのアプリにあるスキャンボタンを押し、スマートフォンのカメラをかざすと、オーナーズマニュアルやカタログに掲載されているスイッチ類の説明が表示される。機能によっては動画による説明も閲覧できる。これまでは運転席周りの一部のスイッチにこれなにガイドの対象が限定されていたが、2024年8月30日にガイド範囲が大幅に拡大された。運転席周りのほぼ全てのスイッチの説明が利用できる。
現在これなにガイドが利用できるのはプリウスのUグレードだが、2024年10月ごろにヤリス、同年12月ごろにはヤリスクロスも対象車種に加わる。
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