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誰も教えてくれない設計NGあるある【ねじ編/前編】設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策(5)(2/2 ページ)

連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説する。連載第5回は、ベテランエンジニアの頭の中にある“暗黙の常識”にフォーカスし、「誰も教えてくれない設計NGあるある【ねじ編】」をお届けする。

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2.スペーサなどの部品以外の共締めはNG

 1本のねじに対し、3つ以上の部品を通して固定する構造/施工のことを「共締め」といいます。この共締めに関して、ベテランエンジニアの中では「共締めに用いる部品がスペーサ、ワッシャ、シムなどである場合を除き、共締めを前提とした設計はしない」との考えが一般的です。

共締め構造の例
図2 共締め構造の例[クリックで拡大]

 その理由は主に2つあります。

 1つ目の理由は「部品の取り付け位置がズレやすいから」です。ねじで部品を締結する際、部品を手で抑えながら行いますが、同時にねじ止めをする部品の点数が多ければ多いほど、部品をしっかりと抑えるのが難しくなります。特に、トルクをかける瞬間は、ねじが回転するのにつられて部品も回転しようとしてしまうため、取り付け位置がずれやすくなります。

 ちなみに、部品に挟み込みさえすれば機能するスペーサ、ワッシャ、シムなどであれば、トルク締め時に回転してしまったとしても、問題になることはほとんどありません。

 2つ目の理由は「メンテナンス性が悪化するから」です。いくつかの部品が共締めされている場合、そのうちの1つの部品だけを調整/交換しようと思っても、他の部品まで全て外さなければなりません。また、一度ねじを緩めてしまうと、再度ねじをトルク締めする際に「取り付け位置のズレ」の問題が生じるため、設備の復旧作業に時間を要してしまいます。

3.ワークが通過する上部での上向き締結はNG

 各部品に配置されたねじのうち、部品の底面から上方向に向かって挿入されているねじの箇所のことを、ここでは「上向き締結」と呼びます。この上向き締結でねじを配置する際の暗黙の常識として、「ワークが通過する上部では上向き締結を採用しない」ことが挙げられます。

 例えば、コンベヤーでワークを搬送している部分の上空にカメラを配置するとします。コンベヤーを囲うようにフレームを門形に組んで、そこからカメラ用ブラケットを通じてカメラを取り付けるという設計をする際、そのカメラ用ブラケットに配置するねじが上向き締結になっていると、設備稼働中に問題を引き起こす可能性があります。

 その問題とは「ねじの脱落」です。ねじは時間経過とともに緩んでいきます。このとき、ねじの配置が上付き締結になっていると、ねじが脱落してしまう可能性があります。

「ねじの脱落」の可能性がある設計例
図3 「ねじの脱落」の可能性がある設計例[クリックで拡大]

 ねじが脱落してしまい、それが仮にワークに当たってしまうと、ワークが損傷して不良品扱いになったり、異物混入につながったりしてしまいます。それが食品機械だった場合には、食品へのねじ混入は即座に大きなコンタミ問題となり、食品メーカーの信頼を損ねる事態になりかねません。

 この対策として最も有効なのは「そもそもワークが通過する上部にねじを配置しないよう設計を工夫する」ことです。もし、それが難しい場合は、ねじが下向き、または横向きの締結になるよう部品の形状を工夫するようにしましょう。

 もし、どうしてもワーク上部に上向き締結のボルトを配置することが避けられない場合は、脱落防止策/緩み止め対策を徹底し、かつメンテナンスの頻度を高めるなどの対応が必要になります。 (次回へ続く

ねじが緩んでも脱落しない設計の例
図4 ねじが緩んでも脱落しない設計の例[クリックで拡大]

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筆者プロフィール:

りびぃ

りびぃ
ものづくりのススメ」サイト運営者

2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。

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