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いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い【前編】基礎解説(1/2 ページ)

社会や現場課題を解決するためのアイデアを考え、それを具現化する「機械設計」の仕事ですが、実は「製品設計」と「設備設計」で文化や仕事の進め方が大きく異なります。今回は【前編】として、「設計対象物」「QCDの優先順位」「新規性の有無」をテーマに“製品設計と設備設計の違い”を分かりやすく解説します。

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 日本は今も昔もモノづくりが盛んな国として知られています。「『モノづくり大国』というのは過去の話だ」と報じているメディアもありますが、だとしても現在の日本のGDP(国内総生産)の大部分を占めるのは「製造業」であることに違いはありません。そして、このモノづくりに対する需要は今日でも衰えることなく、むしろ高まり続けています。特に少子高齢化問題に対応するために、機械やロボットの活用によって限られた人口でも経済活動を維持、発展させていこうという取り組みが各所で見受けられます。

 このような背景の中で「機械設計」の仕事は、社会や現場の課題を解決するために機械のアイデアを考え、それを形にするクリエイティブな職業です。この機械設計の仕事を目指す方は今でも多く、4年生大学の機械工学科や工業高校へ進学し、工学や設計のモデリングについて学ぶ学生は後を絶ちません。中には「トヨタ自動車やソニーのような、世界中で認知されているモノづくりに携わりたい」と志している人もいます。

 しかし、機械設計と一口に言っても、業界によってその仕事の様子が大きく異なることはあまり知られていません。実は、機械設計には主に「製品設計」と「設備設計」という2つのジャンルがあり、それぞれが全く違う文化や仕事の進め方を有しています。

 そこで今回は、製品設計と設備設計それぞれの違いについて、【前編】【後編】の2回に分けて詳しく解説していきます。機械設計に携わる方のキャリアプラン作成や業界理解に役立てていただけたら幸いです。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

製品設計とは? 設備設計とは?

 まず、製品設計ですが、これは「不特定多数に販売するような機械を設計すること」を指します。例えば、スマートフォンや自動車そのものの設計などがこれに該当します。設計対象の製品の中には、B2C(一般消費者向け)のものもあれば、B2B(企業向け)のものもあります。自身が設計した製品を多くの人に認知してもらいたい、使ってもらいたいと考える人は、B2C向けの製品設計に携わる人が多いです。

 一方、設備設計とは「生産設備を作るための機械設計のこと」を指します。例えば、スマートフォンを製造するためには各パーツの製造、搬送、組み立て、洗浄、検査など、複数の工程が必要になります。こういった複数の工程を自動的かつ効率的に処理するために導入される機械が生産設備であり、その機械の設計を設備設計と呼ぶのです。設備設計の場合はほぼ100%がB2B向けであるため、自身が設計した機械が世の中に広く認知されるケースは非常に少ないですが、製品設計にはない魅力もあります。

機械設計は「製品設計」と「設備設計」に分類できる
図1 機械設計は「製品設計」と「設備設計」に分類できる[クリックで拡大]

設計対象物の違い

 製品設計の場合、設計対象となる機械のサイズは比較的小さいことが多いです。不特定多数に販売される製品は、大きくてもせいぜいバスやトラックぐらいになります。さらに、1つの製品の中でも構成部位ごとに設計担当が分かれていることも多いです。例えば、自動車を例に挙げると、シャシー、トランスミッション、エンジン、インテリア、エクセテリアなどの部位がありますが、基本的にそれぞれ別の企業や別の部署で設計開発が進められています。そのため、製品設計の場合は、1人の設計者が担当するのは1機種の機械の中でもごく一部になることも珍しくありません。

 これに対して設備設計の場合、製造する製品の大きさや要求される性能により機械のサイズはピンキリになります。例えば、小型の製品を半自動(材料のセッティングなど、一部の作業を人が行う想定の機械)で検査する装置でしたら6畳ぐらいのスペースに収まる大きさの機械になります。一方で、自動車部品の組み立てラインなどのような全自動の生産ラインとなると、長さが何十メートルにも及ぶ巨大な機械になることもあります。

 さらに、設備設計の場合、1人の設計者が担当する範囲は製品設計と比べて広いことが多く、部品点数で数百点規模になるような設計を1人で担当することも珍しくありません。ただし、プロジェクトによっては1つの機械の設計を複数人で担当し、設備の機能ごとに分かれて設計を進めていくこともあります。

設計対象物の違い
図2 設計対象物の違い[クリックで拡大]

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