シフトレバーを動かしてから、クルマの動きが変わるまで:いまさら聞けないクルマの仕組み(3)(1/3 ページ)
今回はクルマが動く上で不可欠なトランスミッションについて、構成部品やその動作について解説していきます。
本連載では、自動車開発が専門外だという方々に向けて自動車に関する最近のアレコレを解説していきます。本連載を読んでいけば、自動車業界に関わる情報やニュースをより楽しめるようになる!……はずです。
今回はクルマが動く上で不可欠なトランスミッションについて、構成部品やその動作について解説していきます。
基本構造:AT
オートマチックトランスミッション(AT)は、変速機の一種です。近縁種にデュアルクラッチトランスミッション(DCT)やオートメーテッドマニュアルトランスミッション(AMT)がありますが、こちらでは一般的なプラネタリーギヤのATを解説します。
ATの構成要素は主に、トルクコンバーター、プラネタリーギアセット、油圧制御システムに分かれます。トルクコンバーターはエンジンの動力を変速機に伝え、プラネタリーギアセットの歯車で変速します。油圧制御システムはエンジン回転数や運転条件に合わせて変速制御します。
基本構造:トルクコンバーター
トルクコンバーターの主な役割は、ATにおいてエンジンの出力をトランスミッションに伝達する際に発生するトルク(回転力)を調整し、滑らかに伝達することです。仕組みは下記の通りです。
構成
通常、ポンプ、タービンおよびステーターと呼ばれる3つの主要な部分で構成されています。ポンプはエンジンに直結しており、エンジンの回転力を利用して油圧を生成します。タービンはトランスミッションと連動しており、油圧によって駆動されます。ステーターはポンプとタービンの間に配置され、油流の方向を制御して効率的なトルク伝達を可能にします。
動作の大まかな流れ
- エンジンが回転してポンプが油圧を生成し、トルクコンバーター内のフルードを移動させます
- ポンプから送られたフルードがステーターを介し、タービンに送り込まれます
- フルードの圧力によってタービンが回転し、これによって動力伝達します
フルードとトルク伝達
トルクコンバーターは一般にATF=オートマチックトランスミッションフルードで満たされています。これにより内部の機構がスムーズに作動して滑らかな走りに貢献しています。エンジンとトランスミッションの間で発生するトルクの変動を調整してくれる重要な「部品」です。
基本構造:プラネタリーギヤセット
プラネタリーギヤセットは、順回転の変速だけでなく逆転変速も可能であり、ATの変速そのものをつかさどる重要な役割を持っています。下記では1セットの構成を説明しますが、近年のATはこのプラネタリーギヤセットを複数段重ねて使用しています。
非常にコンパクトでありながら高い変速比を実現できるため、自動車のトランスミッションにとどまらず産業用機械、航空機の動力伝達システムなどで広く利用されています。
構成
中心に配置されたサンギヤ、サンギヤの周囲を回転する複数のプラネタリーギヤ、そしてこれらを包み込むリングギヤから構成されます。なお、プラネタリーギヤはプラネタリーキャリアによって保持され、互いに一定間隔に保たれるようになっています。
変速機能
サンギヤ、プラネタリーキャリア、リングギヤのいずれかを、それぞれ入力、固定、出力と役割分けし切り替えることで、2種の減速と2種の増速を行うことができます。1990年代あたりのATに4速が多いのは、この特徴から来ています。今はギヤセット自体を3段、4段と増やすことにより、より多くの変速段数を実現しています。
逆転方向でも実はやろうと思えば変速できますが、自動車では基本的に固定単速で使います。
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