経産省が「7つのリファレンス」でモノづくりのスマート化を図る理由:FAインタビュー(3/3 ページ)
経済産業省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は共同で「スマートマニュファクチャリング構築ガイドライン」を策定した。策定の背景を経済産業省に聞いた。
ガイドラインを通して製造業の稼ぐ力を強化
川村 ガイドラインを全て読む必要はなく、自分たちが“本当にここだ”と思う箇所を選んで、見ていただければと思う。経営課題を見つけてほしいというのが一番であり、変革課題が発想しづらい場合は、外部の環境変化や自社の生産特性から、一般的にはどんな課題が多いのかを見て、自社に当てはめてもらいたい。
MONOist ガイドラインの読者にメッセージを
稲垣 ものづくり白書でも触れているように、製造事業者の稼ぐ力の強化に寄与しないと、これらをいくら整備してもあまり意味がない。
“技術で勝ってビジネスで負ける”というのはこれまでも言われてきたことだ。その一因として、それぞれの業務に携わる方々は自分たちの技術は深掘りしていても、隣の部署が何をやっているか分からずにサイロ化している点がある。
そんな状況に陥っているところを打開して、ビジネス全体として勝てるようにしていく一助になればという思いで、全体最適をキーワードとして、現場の業務改革課題を起点にガイドラインを作成してきた。ゆくゆくは日本の製造事業の稼ぐ力の強化につながっていくことになれば、と期待している。
川村 日本の製造業では、欧米に比べて収益性の低さが課題となっている。ものづくり白書では、CX(コーポレートトランスフォーメーション)という表現で、組織全体をグローバル競争に合うような形で仕組み化する必要性を訴えたが、製造機能の全体最適、見える化を図り、デジタル競争に打ち勝っていく必要がある。
DXで言えば欧米は個社の全体最適を目指し、徹底的に標準化をした上で仕組みを作っていく。そして、自社で見える化を行うと、それを製造ソリューションのような形でサービスとして提供する。そうすることで、単にモノを作って販売するよりも付加価値の膨らみ方が変わってくる。前提として、データをいかに活用するか、という戦略を立てている。
日本のモノづくりは現場力、技術力が優れている。だからこそ、それらをビジネスに生かすための仕組み、全体最適を考えていかなければならない。
今は、データが力になる時代であり、不確実な世界で自らの姿を変え、適応していくためにもデータや見える化が必要だ。今回のガイドラインがそのきっかけになればうれしい限りだ。2024年度中にも、NEDOの調査事業でガイドラインのブラッシュアップおよび第2版の公表を計画している。皆さんが使いやすいように、現実に沿った形にしていきたいので、ぜひ目を通していただき、ご意見をいただきたい。
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