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3D CAD利用動向調査から考える導入/活用の進め方テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線(4)(1/2 ページ)

連載「テルえもんが見たデジタルモノづくり最前線」では、筆者が日々ウォッチしているニュースや見聞きした話題、企業リリース、実体験などを基に、コラム形式でデジタルモノづくりの魅力や可能性を発信していきます。連載第4回のテーマは「3D CADの導入と活用の進め方」です。

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 今回は、製造業向けメディアの「MONOist」と「TechFactory」が2024年5月に実施し、同年7月31日に公開した「CADの利用動向に関する調査」の結果を参考に、3D CADの導入と活用の進め方について、筆者の経験も交えながら紹介していきます。

⇒ 連載バックナンバーはこちら

3D CADを導入しない理由

 同調査では、製造業に従事する読者を対象に、2D/3D CADのそれぞれに関する利用動向や2Dから3Dへの移行状況、リプレイスやバージョンアップに関する意向、利用しているCADツールの種類などについて問い、“設計現場の今”を浮き彫りにしています。

 2Dから3Dへの移行については、「完全に移行した」という回答が15.2%、「移行はほぼ完了しているが、2次元の運用も残っている」という回答が30.3%、「移行途中」が11.5%となり、6割弱が3D CADを利用している結果となりました。一方、「3D CADへの移行予定はない」との回答は全体の24.3%となっており、その理由の第1位は「2D CADや図面のみで業務が回るから」でした。

「3次元への移行の予定はない」と回答した理由について
図1 「3次元への移行の予定はない」と回答した理由について[クリックで拡大]

 これまで筆者は過去の連載の中で、3D CADの導入が進まない理由や“脱2次元”できない現場で効果的に3D CADを活用する方法などについて解説してきました。

 過去の連載でも説明しましたが、岩手県内を中心に3D CADの普及を推進する筆者は、これまでさまざまな企業を訪問し、担当者の方と“脱2次元”や“3次元化”についてたくさん話をしてきました。そうした中、3D CADを導入/活用できない理由としてよく耳にしてきたのが「人がいない」「お金がない」「分からない」の“3つの「ない」”です。

 特に、3D CAD導入/活用の足かせとなっているのが「分からない」であり、「分からないもの=怖いもの」だと拒否反応を起こし、“3次元アレルギー”に陥っているケースがよく見られます。

 また、設計現場にとって、“2D CADから3D CADへの移行”は簡単なことではありません。ソフトウェアの操作性が変わることはもちろん、これまでの設計プロセスを変えたり、社内全体の業務の流れや仕組みを変えたりする必要があります。3D CADを導入するだけで、3Dデータ活用が進むわけではありません。さまざまな理由で3D CAD導入に失敗している企業が多くあるのも事実です。

3D CADの情報を収集することの重要性

 同調査結果からも分かる通り、「2D CADや図面のみで業務が回るから」「親会社や取引先、協力会社などが2D CADを使用しているから」といった理由で、“3次元へ移行する必要がない”と考える現場も少なくありません。

 しかし、そうした現場であっても、実際に3D CADのデモを見たり、触れたりすることで、そのメリットに気が付くことがあります。もともと「分からないもの」と考え、3D CADに一切興味のなかった(3次元アレルギーだった)現場が、3D CADの良さを理解した途端に、「周囲がまだ2次元でも、自分たちから率先して3D CADを活用していこう!」と180度方向転換したケースもあります。また、自分たちだけでなく、連携先の企業にも3D CADの良さを伝え、3Dデータ活用を広めていった“社内外を巻き込む展開”へ発展した事例も見られます。

 「分からない」というのは、「3D CADのメリットが分からない」「3D CADの使い方が分からない」「3D CADの活用法が分からない」「3D CADの運用の仕方が分からない」など、3D CADに対しての理解不足が原因です。3D CADを導入することで得られるメリットをきちんと理解できれば、十分な投資を行い、人材を確保し、積極的に3D CAD推進を図ることも不可能ではないはずです。

 当初「3D CADは必要ない」と言っていた企業が、実際に3D CADでのモデリング機能やアセンブリ、図面化、干渉チェック、質量計算などのやり方をデモで見せた途端に、「こんなに簡単な操作でできるのか!」と驚き、3次元化に踏み切ったという例を、筆者は過去に何度も見てきました。

3D CAD活用のメリット
図2 3D CAD活用のメリット[クリックで拡大]

 同調査では、CADツールのリプレイスの予定についてもヒヤリングしており、「リプレイスの予定はない」が46.9%、「分からない」が43.7%で、「リプレイスしたい」と回答したのは約10%程度でした。

 使用中の3D CADで十分に満足している場合でも、実は他の3D CADの方が高機能で使いやすく、業務効率化や設計品質の向上に役立つかもしれませんので、自社で使用しているCADツール以外についても、常に情報収集しておくことをオススメします。

 「3次元への移行の予定はない」の理由の中に、「3次元ツールが高そうだから」という回答もありましたが、最近は安価に使用できる3D CADも登場しています。例えば、「Autodesk Fusion」は年間10万円以下で使用できます。CAEやCAMなどの機能も搭載されています。また、個人の勉強や趣味用途であれば、無料で3D CADの機能を使用することも可能です。さらに、連載第2回「Webブラウザで動作する3D CADに注目してみた」で紹介した「Onshape」などは、高額なハイスペックPCを用意する必要がなく、Webブラウザ上で3D CADを動かせるため、気軽に導入し、使用することができます。

 「3次元ツール=高い」というのは、もはや昔の話です。今では無料のものや安価に導入できる3D CADもたくさんあります。

 「3次元への移行の予定はない」の理由の中に、「3次元は面倒くさそう/覚えるのが大変そうだから」というものもありました。しかし、筆者が行っている3D CAD講習やデモ体験に参加した人たちからは、「思ったよりも難しくない」「昔と比べて(操作が)簡単になった」といった声をよく聞きます。

 確かに、3D CADの操作を数時間で完全にマスターすることは難しいですが、昔と比べて操作画面が格段に分かりやすくなっていたり、ヘルプやWebに詳しい操作方法や解説が載っていたりなど、習得しやすい環境が整ってきています。

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