国内製造業の稼ぐ力向上に必要な「CX」 グローバルな組織力強化を:ものづくり白書2024を読み解く(1)(5/5 ページ)
日本のモノづくりの現状を示す「2024年版ものづくり白書」が2024年5月に公開された。本連載では3回にわたって「2024年版ものづくり白書」の内容を紹介していく。
産業データ連携への意識向上も課題
2024年版ものづくり白書では、製造業の競争力強化を目的としたビジネスエコシステムを形成する手段の1つ、かつ個社やケイレツの枠を超えた産業規模での最適化を目指すものとして、産業データ連携についても言及している(図21)。グローバルでは欧州の自動車サプライチェーン(Catena-X)を中心に、個社や業界を超え、産業規模でCO2排出量などのデータを共有し、産業規模でサステナビリティや競争力強化を図る取り組みが進行中だ(表22)。
日本でもウラノス・エコシステム(Ouranos Ecosystem)などの取り組みが始まっているが、産業データ連携については、実施している企業、または実施に向けて検討している企業の割合は5%に満たない(図23)。また、産業データ連携自体の認知度も低く、産業データ連携への参加意向もわずかにとどまる(図24、図25)。
これに関して、産業データ連携に取り組むに当たって、5割以上の企業が「セキュリティの担保」や「データの秘匿性の確保」に対して、懸念を抱いていることが分かった。さらに、前述の産業データ連携への参加意向の回答別に取り組みへの懸念事項を分析すると、「参加の必要はない」「分からない」と回答した企業において、「データ連携によるメリットが分からない」と回答した割合がともに約5割を占め、「参加したい」「参加するかどうか検討したい」と回答した企業と比較すると多さが目立つ結果となっている(図26)。
これらの結果を踏まえ、2024年版ものづくり白書では、産業データ連携の動きを加速するには、個別企業にとっての具体的なメリットを示すことが必要だとしている。さらに、サプライチェーン全体でのCO2可視化、削減などのユースケースをベースに業界や意欲の高い事業者が核となり、ルールを整備すること、またデータ連携のためのアプリケーション等についてはマーケットプレースなどを活用することで、新たなプレーヤーのサービス参入・競争を促進するアプローチが有効であるとしている。
第1回では製造業の「稼ぐ力」の向上には、経営や組織の仕組み化を図るCXと、DXによる製造機能の全体最適および事業機会の拡大が欠かせないことを確認した。第2回では、国内製造業の動向と環境変化、事業所設立や移転の投資状況にフォーカスを当てる。
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筆者紹介
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
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