ニュース
肥満により透析治療が必要になりやすい腎臓の特徴を解明:医療技術ニュース
東京慈恵会医科大学は、独自に開発したネフロンポドサイト解析法を用いて、肥満による腎障害の程度に個人差が生じるメカニズムを臨床的に実証した。
東京慈恵会医科大学は2024年7月24日、独自に開発したネフロンポドサイト解析法を用いて、肥満による腎障害の程度に個人差が生じるメカニズムを臨床的に実証したと発表した。
腎臓の糸球体毛細血管を束ねる上皮細胞のポドサイトは、腎臓の正常なろ過機能を維持するために不可欠とされている。東京慈恵会医科大学は、これまでの研究で、腎組織一切片からポドサイトの数や大きさを計測する独自の手法を確立している。
今回、この手法を用いて、肥満関連糸球体症例のポドサイトの数と大きさを計測し、健康な腎臓のポドサイトと比較した。
その結果、肥満関連糸球体症の発症には、ポドサイトの相対的、絶対的な数の減少が、また腎機能障害の進展にはポドサイト密度の減少が関与していることが明らかとなった。このことから、肥満によって惹起(じゃっき)される単一ネフロン過剰ろ過とポドサイトの潜在的な数の不一致が、肥満関連糸球体症の発展と進展に関与していると示唆される。
また、早期の肥満関連糸球体症では、腎機能低下やネフロン数減少に先がけて、糸球体あたりのポドサイト数や糸球体容積あたりのポドサイトの密度が減少していることが明らかとなった。
肥満は慢性腎臓病の要因となることが知られており、肥満特有の腎臓病の一型である肥満関連糸球体症も認知されてきた。今後は、糖尿病腎症など他の腎疾患においてもネフロンやポドサイトの指標が病態や臨床像に関わっているか検証する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 少ない内視鏡画像で学習する高精度な膀胱内視鏡診断支援AIを開発
産業技術総合研究所は、画像基盤モデルを使用して少量の内視鏡画像の学習から高精度に診断する膀胱内視鏡診断支援AIを開発した。事前学習に広く使われるデータセットを上回り、泌尿器科専門医に匹敵する精度だ。 - パナソニックは2030年度にナノイーデバイス累計2億台出荷へ、海外と車載を核に
パナソニックは、彦根工場で生産しているナノイーデバイスのグローバル累計出荷台数が1億台を突破したと発表した。今後はグローバル展開と車載向け事業のさらなる拡大により、2030年度に2億台のグローバル累計出荷台数を目指す。 - 注射針などの針管と針基の接着を強化するプラズマ装置を発売
魁半導体は、医療用注射針などの製造工程において、針管と針基の接着を強化するためのプラズマ処理装置「針用真空プラズマ装置 TSM-90」を発売した。プラズマ技術で、カヌラとハブの接着と接着強化のための表面汚染物質の除去を同時に実施する。 - 4G通信接続で遠隔管理と胸骨圧迫中の心電図解析ができるAEDを発売
日本ストライカーは、4G通信により管理者が遠隔で一元管理できる、2種のAED「ライフパックCR2 4G cprINSIGHT」「ライフパックCR2 オートショック 4G cprINSIGHT」を発売した。 - 整形外科腫瘍学への3Dプリントモデルの使用の評価を目的に臨床試験を実施
StratasysとRicoh USAは、整形外科腫瘍学への3Dプリントモデルの使用の評価を目的とした臨床試験で最初の患者を登録した。患者個別の3Dプリント人体モデルの有効性を評価する。 - 温度感受性TRPV4チャネルが発汗に関与することが明らかに
自然科学研究機構 生理学研究所は、マウスの発汗において、温度感受性TRPV4イオンチャネルとアノクタミン1の機能関連が関与することを明らかにした。また、ヒトの汗腺でも、TRPV4イオンチャネルの発現が低下していることも分かった。