少ない内視鏡画像で学習する高精度な膀胱内視鏡診断支援AIを開発:医療機器ニュース
産業技術総合研究所は、画像基盤モデルを使用して少量の内視鏡画像の学習から高精度に診断する膀胱内視鏡診断支援AIを開発した。事前学習に広く使われるデータセットを上回り、泌尿器科専門医に匹敵する精度だ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2024年7月12日、産業技術総合研究所(産総研)が高精度な膀胱(ぼうこう)内視鏡診断支援AI(人工知能)を開発したと発表した。NEDOの委託事業「人と共に進化する次世代人工知能に関する技術開発事業」による成果だ。
開発したAIは、産総研がこれまでに同事業で開発した、数式から自動生成した大規模画像データセットを用いてAIの画像認識モデルを構築する手法を応用したものだ。膀胱内視鏡画像で確認できる膀胱粘膜の変化に着目し、異なる特徴を持つ2種類の数式から自動生成した大規模画像データセットを事前学習する。事前に学習する画像と付随情報の双方を数理モデルから生成するため、大量の実画像は必要なく、プライバシーを侵害することもない。
具体的には、表面の質感の特徴を持つデータベース「FractalDB」で生成した画像100万枚と、輪郭形状の特徴を持つ人工画像データセット「Visual Atoms」で生成した画像100万枚を合わせた大規模画像データセット200万枚を用いて、画像分類AIモデル「Vision Transfomer(ViT)」を事前学習させ、膀胱内視鏡画像向けの画像基盤モデルを構築した。さらに、膀胱内視鏡画像の病変画像を1259枚、正常画像を7553枚追加学習して診断支援AIモデル「MixFDSL-2k」を開発した。
学習していない膀胱内視鏡画像422枚を用いて検証したところ、MixFDSL-2kは感度が94.3%、特異度が99.4%、正解率は98.3%だった。この値は、事前学習に広く使われているデータセットの「ImageNet-21k」「ImageNet-1k」を事前学習に用いた場合の診断精度を上回っており、泌尿器科専門医に匹敵する精度を得られた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 整形外科腫瘍学への3Dプリントモデルの使用の評価を目的に臨床試験を実施
StratasysとRicoh USAは、整形外科腫瘍学への3Dプリントモデルの使用の評価を目的とした臨床試験で最初の患者を登録した。患者個別の3Dプリント人体モデルの有効性を評価する。 - 温度感受性TRPV4チャネルが発汗に関与することが明らかに
自然科学研究機構 生理学研究所は、マウスの発汗において、温度感受性TRPV4イオンチャネルとアノクタミン1の機能関連が関与することを明らかにした。また、ヒトの汗腺でも、TRPV4イオンチャネルの発現が低下していることも分かった。 - 新型コロナウイルスの糖鎖と結合し、感染を抑制する天然物を特定
名古屋大学らは、放線菌が生産する天然物のプラディミシンAが、新型コロナウイルス表面の糖鎖と結合し、感染を抑制することを発見した。糖鎖構造はウイルス変異で変化しにくいため、さまざまな変異株に有効な抗SARS-CoV-2薬の開発が期待される。 - Stratasys、リアルな人体モデルを造形できる医療分野向け新型3Dプリンタを発売
Stratasysは、新しい3Dプリンタ「J5 Digital Anatomy」を発表した。患者個別のリアルな人体モデルを作成できるため、患者の予後改善や医療業務の効率化、医療機器の迅速な開発に役立つ。 - オリンパスの新CFOは伊藤忠出身、“数字”の管理で成長を支える
オリンパスが新CFOである泉竜也氏の合同取材に応じた。泉氏は「当社がグローバル・メドテックカンパニーを目指していくためには、経営に関わるさまざまな“数字”を管理するCFOが果たすべき役割は大きい。この“数字”をよりタイムリーに分析できる体制整備を進めていく」と語る。 - 次世代の「水道哲学」に挑戦、パナソニックHDが技術未来ビジョンを発表
パナソニック ホールディングスは、約10年ぶりに長期の技術開発の方向性を定めた「技術未来ビジョン」を発表した。