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ソフトもハードもビジネスモデルも、今アジャイル開発が製造業に求められる理由製造マネジメント インタビュー(2/2 ページ)

なぜ、現在製造業のアジャイル開発の手法が広く求められているのだろうか。SAFeを展開するScaled Agile SAFeメソドロジスト兼フェローであるハリー・コーネマン氏に話を聞いた。

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アジャイル化を進めるためにはどうすべきか

 では、具体的にハードウェアでもアジャイル開発を進めていくためにはどうしたらよいのだろうか。コーネマン氏は「製品開発における機能(工程)ごとに組織化するとどうしても時間がかかる。バリュー(製品価値、製品機能)を中心に組織化することが必要だ」と訴える。

 「とにかく早くデリバリーをすることが最善だ。そのためには、機能別工程で組織を構築するのではなく、バリュー(製品機能)ごとにクロスファンクションチームを構築し部門横断で必要なスキルを持つ人を集めて、機能のリリースを行えるようにする。例えば、車載カメラを例を挙げると、カメラに搭載されるイメージセンサーや、FPGA、プリント基板、筐体などさまざまな部品が搭載されており、これらに関わるプリント基板設計者や筐体などのメカ設計者、イメージセンサーへの知見を持つ専門家、アナログとデジタルのそれぞれの技術の専門家、車載に対する知見を持つ専門家などが1つのチームとして動くことが必要になる。あらゆる人材がT字型人材(※)になることが求められる」(コーネマン氏)

(※)T字型人材:ある分野で専門的な深い知識や知見を持ちながら、横断的な分野にも知見の幅を広げる人材

photophoto 従来型の機能(工程)別モノづくり組織のリードタイム(左)とバリューベースによるモノづくり組織[クリックで拡大] 出所:Scaled Agile

 さらに、コーネマンは「こうしたモノづくりにおけるアジャイルチームはより大きなバリューストリームの一部である。SAFeでは製品やサービスを顧客に提供するのに必要な一連の活動である『オペレーショナルバリューストリーム(OVS)』と、ビジネス仮説をバリューを提供するテクノロジー活用ソリューションに変換するために必要な活動である『デベロップメントバリューストリーム(DVS)』の2つに分けて考えている。さらにこれらのバリューストリームが組み合わさってさまざまな活動が定義されている。ビジネスモデルなども含めたより幅広い価値を示すことができる」と語る。

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SAFeによる2種類のバリューストリーム[クリックで拡大] 出所:Scaled Agile

 こうした取り組みをより具体的なものとするために、意図されているソリューションの動作と設計に関する知識を保存、管理、伝達するためのリポジトリであるソリューションインテントや、ソリューションの意図を表現するためにモデルを使用するMBSE(モデルベースシステムズエンジニアリング)などの活用を推進。ウオーターフォール式の開発では、要件定義やそれによる仕様決定までに非常に大きなリソースが必要になるが、アジャイル開発では、仕様決定を通常の仕事のフローの一部として実行する必要がある。そのためには、システムを小規模に切り分けて少しずつ指定していく必要がある。「アジャイル開発では、システムを垂直方向にスライスし、仕様のバッチサイズを小さくして、進めていくことが必要となる」とコーネマン氏は述べている。

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従来方式とアジャイル開発による仕様決定プロセスの違い[クリックで拡大] 出所:Scaled Agile

アジャイル開発へ移行するポイント

 コーネマン氏は「アジャイル開発が生きるのは、変化が大きく不確実性が高い分野だ。変化があまりない領域だと従来型の開発でも問題ない。開発期間中にも変化が起こり続けるような領域でこそ価値が生きる。ただ、現在はそういう分野増えている」と訴える。

 ただ、従来型の開発体制からいきなりアジャイル開発へと切り替えていくのは難しい。そのポイントとしてはどういうことがあるのだろうか。

 コーネマン氏は「アジャイル開発を進めていくためにはクロスファンクションチームが必要になるが、いきなり組織全体を変えるのは難しい。バリューストリームごとでバーチャル組織のような形ではじめ、ある曜日だけは、バーチャル組織で動くというような形で進めていくのが現実的だ。また、重要になるのが、こうした変革を導くリーダーだ。アジャイル開発によって製品開発を成功に導くとともに、アジャイル開発のノウハウを確立し、それを組織内に伝える役割が重要になる。さらに、成果の出し方が変わるために評価を含む人事体制にも手を入れ、心理的安全性を確保してあげることも重要だ」と語る。

 コーネマン氏は「製造業がハードウェアを含めたアジャイル開発を進め始めたのはまだ最近のことで、日本の製造業が特に遅れていることはない。今から取り組むことで新たなモノづくり手法として先んじることもできる」と訴えている。

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