AM製品の品質をいかに保証するか、国際規格の使い方とメリット:AMの品質保証とISO/ASTM 52920(5)(3/3 ページ)
本連載では、AM(Additive Manufacturing)における品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、ISO/ASTM 52920の使い方などを紹介する。
第三者認証の活用
ISO/ASTM 52920を監査基準とした認証は、AM製造者が第三者認証機関に申し込みをします。すると第三者認証機関は、監査基準である規格に、AM製造プロセスや製造環境が適合しているかのチェック(審査)を行い、合格であれば認証書が発行されるという仕組みです。
認証は、AM発注者(B社にとって、「認証を取得している会社はすでにある程度AM量産の品質保証ができている会社」として、調達先を発見するのにも役立ちます。また、発注先が認証を取得していれば、自社が行う監査の工数を大幅に削減することが可能です。
AM製造者(C社)にとっても、自社がどんなふうにAM量産の品質保証を考え、不具合の発生/流出の防止をしているかという客観的な指標として認証を活用することができ、新規取引先の開拓にも生かせるものと思います。
AMは新しい技術であるが故に、発注者側の品質要求のノウハウが成熟しておらず「過剰な心配」を抱えたまま調達に入ることがあります。
その結果、「AMはよく分からなくて心配だから全数検査してほしい」とか、「内部品質が心配なので破壊検査のサンプル数をたくさんとりたい」というような科学的/統計的に有意とは思えないような要求がされることがあります。内部品質の不安のあまり、「割ってみないと良品かどうか分からないから全部割ってほしい」と要求された、というジョークがあるほどです。
(無料ウェビナー「こわさない品質保証」 | テュフズードジャパン株式会社)
これでは買う側にとっても売る側にとってもコストがかかります。これを科学的、統計的に解決するのがプロセス保証であり、その方法を要求事項としてまとめたのがISO/ASTM 52920という規格であり、その規格に適合しているかどうかを第三者的に証明するサービスが第三者認証、ということなのです。
今回は、AM品質保証の国際規格であるISO/ASTM 52920の使い方、メリットについて見てきました。ポイントをおさらいします。
- 規格は品質保証の当事者の両方が使える(規格書を買って、仕事に活用する、という意味において)
- AM品質保証の体制がちゃんとしてるか、を第三者認証によって証明しよう、という意味においては製造者が使う(ISO/ASTM 52920の認証を取得するのは製造者)
次回は、ISO/ASTM 52920はAM品質保証のどの範囲についての要求事項を定めているのかという「適用範囲」について説明したいと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AM(アディティブ・マニュファクチャリング)が実製品活用されない国内事情とは何か
新しいモノづくり工法であるAMは、国内でも試作用途では導入が進んできている一方、実製品用途となると全くと言っていいほど活用されていない。本連載では、何がAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。 - AMを実製品に活用するためには何から取り組めばいいのか
本連載では、何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。今回は、AMを実製品に活用するには何からどのように取り組めばいいのかについて考える。 - 品質保証とは何か、その定義を改めて考える
本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、品質保証とは何かを改めて考える。 - 品質保証システムとその前提である品質マネジメントシステムの関係とは
本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、品質保証システムと、その基盤となる企業自体の、品質を重視する経営の仕組みについて考える。 - 自動車を例に考える工業製品の量産品質保証
本連載では、AMにおける品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、自動車を例に工業製品における量産品質保証について考える。 - 不良の発生と流出を防ぐAMの量産品質保証とは
本連載では、AM(Additive Manufacturing)における品質保証と、その方法を標準化した国際規格ISO/ASTM 52920について解説する。今回は、AMの品質保証について考える。