パナソニックは2030年度にナノイーデバイス累計2億台出荷へ、海外と車載を核に:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
パナソニックは、彦根工場で生産しているナノイーデバイスのグローバル累計出荷台数が1億台を突破したと発表した。今後はグローバル展開と車載向け事業のさらなる拡大により、2030年度に2億台のグローバル累計出荷台数を目指す。
ナノイーデバイスの小型化と高機能化の歴史
ナノイーデバイスの原理は、水を含んだ金属細管に電気を流すとその先端からnmサイズの水滴が発生するという水の静電霧化が基礎となっている。この静電霧化の研究に携わっていた奥山氏との共同研究を経て、2003年に開発に成功した。
ただし、当初のナノイー搭載製品である空気清浄機「エアーリフレ」(2003年発売)やヘアドライヤー「イオニティ ナノケア ウインドプレス」(2005年発売)のナノイーデバイスは微粒子水の基になる水を補給するタイプであり、利便性は高いとはいえなかった。しかし2005年には、ペルチェ素子によって電極を冷却し空気中の水分を結露させることで水の補給を不要としたペルチェ素子第1世代のナノイーデバイスを開発し、利便性の大幅な向上につなげた。また、2006年にはペルチェ素子数を32対から12対に削減した第2世代、2007年には12対から9対に削減した第3世代を開発し小型化を推し進めていった。さらに2011年には、設計思想をゼロから見直してペルチェ素子数を1対に削減したペルチェ素子第4世代のナノイーデバイスの開発に成功している。水補給式の容積が300ccだったのに対し、ペルチェ素子第4世代は8ccとなっており37分の1の小型化を実現していることになる。
小型化についてはペルチェ素子第4世代で一定の成果が見えたことから、2011年以降は放電技術の進化によって微粒子水内に含まれるOHラジカル量を増やすという性能向上の取り組みが始まった。
当初からのナノイーデバイスに採用されていた放電方式はコロナ放電だった。コロナ放電は、霧化電極と対向電極の間を1本の線で結ぶような形の放電になっており、OHラジカル量は毎秒4800億個である。2016年には、コロナ放電よりも高いエネルギー投入が可能なリーダー放電が複数発生するマルチリーダー放電を開発した。マルチリーダー放電のOHラジカル量は従来比10倍の毎秒4兆8000億個であり「ナノイーX」と名付けられた。2019年には、マルチリーダー放電にさらなる工夫を加えて、OHラジカル量が従来比20倍の毎秒9兆6000億個のナノイーデバイスを開発している。そして2021年には、これまで点や線だった放電方式を面に広げたラウンドリーダー放電の開発によりOHラジカル量で従来比100倍の毎秒48兆個を実現している。
現在、ナノイー製品は、OHラジカル量が毎秒4800億個をナノイー、従来比10倍の毎秒4兆8000億個がナノイーX(4.8兆)、同20倍の毎秒9兆6000億個がナノイーX(9.6兆)、従来比100倍の毎秒48兆個がナノイーX(48兆)として展開している。
これらのナノイーデバイスは空気清浄機やエアコンなど「空質向け」だが、ヘアドライヤーをはじめとする「美容向け」も異なるデバイスとして開発されている。これは、ナノイーの発生を長時間行う空質向けとは違い、美容向けは十分な水分量を発生させる必要があるとともに利用時間が30分以下となることを前提としているためだ。
美容向けナノイーデバイスの放電方式もコロナ放電だったが、2019年にはマルチリーダー放電を採用し水分量で従来比18倍を達成している。そして、2024年にはマルチリーダー放電の放電領域を拡大して水分量を従来比180倍に向上することに成功している。この新たな美容向けナノイーデバイスを搭載する「nanocare ULTIMATE」は、同年9月1日に発売される予定である。
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