ローコードツールで迅速に導入 パナソニックがシーメンスのクラウドPLMに移行:製造IT導入事例
シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア(シーメンス)は2024年7月30日、パナソニックがクラウド型PLMソリューション「Teamcenter X」を導入したことを、都内で開催した記者説明会で発表した。
シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア(シーメンス)は2024年7月30日、パナソニックがクラウド型PLMソリューション「Teamcenter X」を導入したことを、都内で開催した記者説明会で発表した。
標準機能に業務を合わせる方針で迅速に導入
今回シーメンスは、パナソニックが持つ製品開発や設計データの管理を行うシステムのクラウド化、SaaS以降の支援を行った。パナソニックは現在、グループ全体でIT基盤や組織の改革を図るDX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクト「Panasonic Transformation(PX)」に取り組んでいる。今回のTeamcenter Xの導入はその一環だと説明されている。
Teamcenter Xの導入によって、データ管理プロセスの統合やリードタイムの短縮、継続的で素早い製品の市場供給を実現するとしている。これまでパナソニックがオンプレミス型で保管してきたデータやレガシーなIT資産をクラウドに移行することで、メンテナンス工数の削減や最新版PLMへの迅速な更新、グローバルでのセキュアなリモートアクセスを実現するという。
また、シーメンス バイスプレジデント兼カントリーマネージャーの堀田邦彦氏は「経済産業省が『2025年の崖』というようなレガシーシステムの維持管理にかかる費用を低減できるため、トータルコストの削減に寄与している」と説明した。
従来のオンプレミス型の運用ではシステムのカスタマイズ機能が多く構築されていたが、Teamcenter Xの導入に際しては標準機能での対応を主軸に据えて、業務プロセスの再構築を行った。堀田氏は「パナソニックはPXの方針もあり、業務をシステムに合わせる考えで導入を行った」と説明している。
帳票に関連する業務など標準機能では対応しづらい領域は、シーメンス傘下でローコードツールを展開するMendixのアプリケーションを活用して対応した。ただ、シーメンス グローバル・セールス&カスタマー・サクセス担当エグゼクティブ・バイスプレジデントのロバート・ジョーンズ氏は「帳票への対応もTeamcenter Xだけで可能な環境になりつつある」とも説明した。
今回のシステムはパナソニック社内の数千ユーザーを対象にするものだった。堀田氏は、「当社のSaaS製品では数千ユーザー規模の導入事例はまだなく、今回のものは世界初の大規模な事例だった」と振り返る。一方で、先述の通り標準機能を軸とした導入を進めたため、「この規模であれば2、3年間かかるところを、要件定義の段階から半年以内と短期間で実装できた」(堀田氏)という。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- PLMでプロダクト単位の損益を見る、設計と経営をつなぐモノづくりの考え方
本連載では“品質”と“コスト”を両立したモノづくりを実現するDX戦略を解説する。第6回は設計と経営をつなぐ上で必要となる考えと、そのためになぜPLMが必要かを解説する。 - スマート工場化は誰が主導すべきか、成否を握る最も重要な要素とは
本連載では、シュナイダーエレクトリック インダストリー事業部 バイスプレジデントの角田裕也氏が、製造業で起きている変化をグローバルな視点で紹介しながら、製造現場の将来像を考察する。 - シーメンスは製薬向けDX提案を強化、ペーパーレスやデータインテグリティなど
シーメンスは、製薬業界向けのDXについての戦略を説明した。 - 「Obbligato」が生成AI連携でさらに設計を高度化 2025年春から提供開始予定
NECは「日本ものづくりワールド 2024」で、AIやIoTなどを取り入れた製造、サプライチェーンのDXに関する展示を行っている。 - ソフトウェア開発支援強化で「モノづくり大国」復活へ PTCジャパン神谷氏の戦略
2023年11月、PTCの日本法人であるPTCジャパンの社長執行役員に神谷知信氏が就任した。神谷氏はAdobeの日本法人で代表取締役社長を務め、事業のクラウド化などを推進してきた経歴を持つ。「デジタル技術を通じて『モノづくり大国』の復活に貢献したい」と熱く語る同氏に、今後のPTCの国内市場戦略を聞いた。 - 経営資源の一元的な把握を目指してきた管理システム 〜図面データの連携の必要性〜
大変革時代を迎える製造業。従来の縦割り、属人化したモノづくりから脱却し、全ての工程でのプロセス改革を実現するには、図面データや発注実績などの製品データを活用した部門連携が欠かせない。連載第4回では設計情報や購買情報を管理するシステムの歴史を振り返るとともに、埋もれた図面データの活用意義や別々に管理されている情報の連携の必要性について解説する。