製造現場を悩ます「守りのDX」と「攻めのDX」問題、推進に必要なスマートな考え方:MONOist主催セミナーレポート(2/2 ページ)
MONOistはセミナー「できるところから始める製造業DX 2024 春」を開催。本稿では、基調講演の、Industrial Value Chain Initiative(IVI)理事長で、法政大学デザイン工学部教授の西岡靖之氏による「製造現場デジタル化に向け、一から始めるスマートシンキング 〜欲しい仕組みは自分で作る〜」の内容を紹介する。
「攻めのDX」の進め方
一方で攻めのDXはデジタル化とデータ化がスタートラインとなる。どのようなデータがあれば、新しいことやどんな価値が生まれるのかを明らかにしていく。そのためには「見える化キット(IoTキット)」」「モノづくり共通辞書(PSLX4)」「コネイン連携基盤(CIOF)」が重要となる。
この中で「見える化キット」については、IVIでは「まるごとIoTキット」を用意している。まるごとIoTキットは在庫量や生産情報、進捗などの見える化を簡単に行うためのツールだ。ICカードリーダーや、電流センサー、加速度センサー、環境センサーなどのIoT(モノのインターネット)デバイスを組み合わせ、業務の中でデータ化できていない情報をデータとして取り出すことができるようにするものだ。このキットにより、プログラミングなしにほしい情報をデータ化し見える化することができ、攻めるための下準備が可能となる。
さらに、得られたデータを業務に落とし込むためには、それぞれのデータの意味を把握し、最適な形に変換していく“辞書”のようなものが必要になる。そこでIVIでは業界共通の知見などを含めた共通辞書として「PSLX」を用意。簡単に意味がある形でデータを活用することが可能だ。このPSLXは既に国際標準である「IEC/ISO 62264-3:2008」の付属書として掲載されている。
重要になる「デジタル化」をする技術
DXを進める取り組みは、関係する部門を巻き込むことが必要であり、この場合技術、知識、ツールなどとともに人材が大きなポイントとなる。そのため「担当する人材には、現場の業務に寄り添ったボトムアップな情報システムの構築を行うための技術やノウハウ、ツールなどの習得が望まれる。ただ、重要なのは『デジタル技術』そのものよりも『デジタル化を行う技術』だ。どのようにデジタル化を進めていくかという知見が求められる」と西岡氏は訴えている。
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