道具の収納や整理整頓に欠かせない「ツールボックス」の仕組み:100円均一でモノの仕組みを考える(2)(3/3 ページ)
本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第2回のお題は「ツールボックス」です。
留め具部分
続いて、留め具を見てみましょう。留め具は、フタ(または本体)と一体になっているタイプ(一体タイプ)と、別部品になっているタイプ(別部品タイプ)に分けられます。さらに、別部品になっているタイプは、1部品で構成されているものと、2部品で構成されているものの2種類があります。
一体タイプは、留め具とフタが1部品で構成されるため、部品点数を削減できます。その半面、フタを開けたり閉じたりする際は、その都度、留め具に力をかけてたわませる必要があり、後述の別部品タイプと比べて止め外ししづらいという欠点があります。また、開閉のたびに留め具部分に負荷がかかるため、白化(樹脂に必要以上に負荷がかかり白くなってしまう現象)してしまう場合があります(図7)。
次に、別部品タイプ(1部品と2部品の2種類)を見てみます。まず、1部品の場合は図8上部のように留め具が軸で回転します。先ほどの一体タイプと比べて、止め外しの動作がしやすくなります。一方、2部品(図8下部)の場合は、開閉を緩めるための“留め具1”と、ロックするための“留め具2”の2部品で構成されます。止め外しの動作はさらに少ない力でできるようになり、部品の摩耗などの破損の確率も格段に下がります。
単純に、留め具としての機能だけを見れば2部品のタイプが「最も機能的である」といえます。しかし、部品点数が増えるということはその分コストアップにつながりますので、実際には使用シーンとコストを比較して、どのような機構を採用するかを決める必要があります。図9と図10に、別部品タイプ(1部品、2部品)の留め具の機構の違いを示しています。
ツールボックスの金型構造
最後に、一体構造と分割構造それぞれのツールボックスの金型構造の違いについて簡単に説明します。
フタと本体が一体構造のツールボックス(この場合、留め具もフタと一体になっている)の部品点数は1つです。そのため、金型も1つで済み、図11のような開いた状態で成形できます。
一方、フタと本体が別部品の分割構造のツールボックスの場合は、図12のように型が2つ必要になります(ここでは留め具については割愛します)。
一見すると、一体構造の方が、型が1つで済むためコスト的には優れていそうですが、フタと本体が一体になっている分、型のサイズがかなり大きくなってしまいます。そのため、先に紹介した機構上のメリット/デメリットと金型サイズ、コストなど、さまざまな側面から検討し、どのような構造を採用すべきかを決める必要があります。 (次回へ続く)
著者プロフィール:
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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