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フローで考える熱のモデリング(その2) 〜熱コンダクタンスの定義と導出方法〜1Dモデリングの勘所(32)(2/5 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第32回では「フローで考える熱のモデリング(その2)」と題し、熱コンダクタンスの定義とその導出方法について取り上げる。

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強制対流熱伝達

 図4に示すように、高温の物体(表面温度一定のTw)の周りに低温の流体(温度T)が流れている場合を考える。

強制対流熱伝達
図4 強制対流熱伝達[クリックで拡大]

 このとき、物体表面からの熱流束は、

式11
式11

となる。熱伝達率hは場所によって異なり、物体全表面からの熱量は、

式12
式12

となる。物体表面の平均熱流束を

式13
式13

と定義すると、

式14
式14

となり、hmを「平均熱伝達率」、最初の式のhを「局所熱伝達率」という。熱伝達率は、熱伝導率、温度伝導率と異なり、流体の物性だけで決定することはできず、以降で述べるように、物体の形状や流れの状態によって決まる。

 平板に沿った流れを考えると、図5に示すように先端位置に近い部分は層流、下流では乱流となる。

層流と乱流
図5 層流と乱流[クリックで拡大]

 層流境界層内の流れは粘性に支配されていて、流速分布に対応したせん断応力τが流れ方向に作用する。その大きさは、

式15
式15

となる。平板表面のせん断応力τw式16となる。

式16
式16

 平板表面では、流体の分子は平板の表面に固定されている(静止している)ので、平板表面からの熱流束は熱伝導の基本式から、

式17
式17

となる。式17と前述の熱伝達の基本式から、

式18
式18

となる。すなわち、熱伝達率は温度境界層の温度勾配によって決まる。層流は乱流に比べて平板表面の温度勾配が小さいため、図5上図に示すような熱伝達率となる。

 熱伝達率の評価には、境界層内の熱と流れが関係する。そこで、図6の座標系で、熱と流れの支配方程式を境界層近似すると下記となる。

式19
式19 連続の式
式20
式20 運動方程式
式21
式21 エネルギー方程式
強制対流熱伝達の座標系
図6 強制対流熱伝達の座標系[クリックで拡大]

 上式の各変数を

式22
式22

により無次元化すると以下となる。

式23
式23

 Reを「レイノルズ数」といい、

式24
式24

プラントル数と呼ぶ。

 一方、物体表面の熱伝達率は、

式25
式25

となる。これから、熱伝達に関する無次元数である「ヌッセルト数」を以下のように定義する。

式26
式26

 ヌッセルト数は温度で決まるので、前述の運動方程式の無次元数であるレイノルズ数、プラントル数で表現できる。すなわち、

式27
式27

となる。

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