若手エンジニアにありがちな強度設計ミス【後編】:設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策(2)(3/3 ページ)
連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説する。連載第2回は、前回に引き続き「若手エンジニアにありがちな強度設計ミス」をテーマに取り上げる。
6.たわみを考慮していない
強度設計そのものの話とは内容が若干それますが、強度設計の内容と同時にぜひ押さえておきたいのが「たわみ」です。というのも、強度計算で問題なかったとしても、たわみが大きければNGになるケースが多いからです。
例えば、アクチュエータを使って動作させる部品のたわみが大きいと、動作させるたびにその部品が振動することになります。この振動は繰り返し応力による疲労破壊の原因になったり、異音の発生原因になったり、アクチュエータの動作不良を引き起こしたりします。
また、吸着パッドを使ってワークを吸着/搬送するような装置では、ワークがたわんでいると吸着パッドとの間に隙間ができてしまい、うまく吸着できないといったリスクが生じる可能性があります。
実際のところ、許容たわみの基準値を明確に示している設計現場はほとんどありませんが、筆者が今まで多くの設計者と議論してきた経験からすると、基本的に1mmオーダ以上はNG、0.1mmオーダは主要部品でなければOKの場合があり、0.01mmオーダなら基本的にOKと判断する方が多い印象です。もちろん、高精度な位置決め/動作を要求する部品であればもっと厳しい値を要求することもありますので、目的や機能に応じて目安の値を判断いただければと思います。
図面の情報やCADの画面に頼り切って設計していると、ついつい重力の存在を忘れがちですが、設計した部品が実物として完成した際の状況をしっかりと頭でイメージしながら設計することが非常に重要です。
ちなみに、たわみ計算をする際、材料力学で学んだような簡単な梁(はり)のモデルに置き換えて手計算をする場面は設計現場でも多いのですが、架台やフレームなどの計算となると手計算では困難です。そのため、機械設計者であっても3Dモデルを使って静解析ができる程度の解析スキルは身に付けておきたいところです。 (次回へ続く)
筆者プロフィール:
りびぃ
「ものづくりのススメ」サイト運営者
2015年、大手設備メーカーの機械設計職に従事。2020年にベンチャーの設備メーカーで機械設計職に従事するとともに、同年から副業として機械設計のための学習ブログ「ものづくりのススメ」の運営をスタートさせる。2022年から機械設計会社で設計職を担当している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い【前編】
社会や現場課題を解決するためのアイデアを考え、それを具現化する「機械設計」の仕事ですが、実は「製品設計」と「設備設計」で文化や仕事の進め方が大きく異なります。今回は【前編】として、「設計対象物」「QCDの優先順位」「新規性の有無」をテーマに“製品設計と設備設計の違い”を分かりやすく解説します。 - いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い【後編】
社会や現場課題を解決するためのアイデアを考え、それを具現化する「機械設計」の仕事ですが、実は「製品設計」と「設備設計」で文化や仕事の進め方が大きく異なります。【後編】では、製品設計と設備設計における「予算配分」「求められる知見」の違いに触れるとともに、「製品設計と設備設計のこれから」について言及します。 - 加工方法を知らずに絵を描いていて不安にならないの?
設計者でも知っておくべき部品加工技術をテーマに、ファブレスメーカーのママさん設計者が、専門用語を交えながら部品加工の世界を優しく紹介する連載。第1回は「設計者がなぜ、部品加工技術について知っておかなければならないのか?」をテーマに解説する。 - 治具って何? 何をするモノ?
現役の“治具屋”でもある筆者が、これまで手掛けてきた治具製作の事例を幾つか引用しながら、治具ができるまでの流れや治具設計のポイント、注意点について解説する連載。連載第1回では、「治具って何? 何をするモノ?」をテーマに、さまざまな治具の事例とその役割などについて紹介する。 - 設計者CAEによる締結部の設計法
部品の固定(締結)のために使用する“ボルトの設計”をテーマに、設計者向けCAE環境を用いて、必要とされる適切なボルトの呼び径と本数を決める方法を解説する。連載第7回では、本連載の最終目標である設計者が使うCAE環境で、必要とされるボルトの呼び径と本数を決める設計法を取り上げる。 - 連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」の内容と有限要素法
金属疲労を起こした際にかかる対策コストは膨大なものになる。連載「CAEを正しく使い疲労強度計算と有機的につなげる」では、CAEを正しく使いこなし、その解析結果から疲労破壊の有無を予測するアプローチを解説する。連載第2回では本連載の「あらすじ」と「有限要素法」について取り上げる。