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手すき和紙と生分解性プラスチックを組み合わせ、新しい複合材料を開発:研究開発の最前線
東北大学は、手すき和紙と生分解性プラスチックを組み合わせ、新しい複合材料を開発した。強度が向上し、コンポスト中で5週間後には80%以上を生分解できることから、新たな用途の拡大が期待される。
東北大学は2024年5月15日、手すき和紙と生分解性プラスチックを組み合わせ、新しい複合材料を開発したと発表した。2つを組み合わせることで、生分解性を保ったまま、強度を向上できる。
研究では、宮城県川崎町の伝統工芸品となる手すき和紙と生分解性プラスチックのポリブチレンサクシネート(PBS)を用いて複合材料(グリーンコンポジット)を作製。3層の和紙と2層のPBSをホットプレスで成形したもの(W3P2)は、和紙単体に比べて約2倍となる60MPa(612kgf/cm2)の引張強さを示した。断面画像からPBSが和紙に含浸して繊維を包み、繊維同士を結着したことによるものと考えられる。
作製したグリーンコンポジットをコンポストに投入した実験では、5週間後に82%の生分解率に達した。PBS単独の場合は57%で、これを上回る結果を得られた。
近年、手すき和紙の生産は減少している。グリーンコンポジット化により、包装や家具、農業用マルチなど、新たな用途の拡大が期待される。しかし現状では、複合材料の生分解性に関する評価方法が未確立のため、研究チームは今後、生分解性評価指針について検証を進める考えだ。
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