自動車メーカー3社でエンジンの重要性を宣言、仕入先へのメッセージ:電動化(3/3 ページ)
トヨタ自動車とSUBARU、マツダはカーボンニュートラルの実現と電動化に対応したエンジン開発の方針を発表した。
スバル
スバル 社長の大崎篤氏は「自動車産業が取り組むべきは、各国の実情に合わせて、現実的に着実にライフサイクル全体でのカーボンニュートラルを目指すことだ。アプローチは多様で、何を選ぶかは手段の問題だ。さまざまな事情や条件に柔軟に対応することが求められている」と環境技術の多様性の意義を語った。
EVに関わる技術やサービスを進化させ、発展させる必要があるのは論をまたないとしつつ、「最終的にどんなクルマを選ぶかはユーザーが決めることだ。そのために素晴らしい選択肢を示し、柔軟で多様な対応が求められている」(スバルの大崎氏)と述べた。
水平対向エンジンとAWD(全輪駆動)はスバルの歴史や独自性に加えて、安心と楽しさを支えるコア技術であると位置付ける。「カーボンニュートラルの時代にも水平対向エンジンを輝かせ続けるためにも、電動化技術に一層の磨きをかけていきたい。カーボンニュートラル燃料の活用に向けても水平対向エンジンを磨いていく」(スバルの大崎氏)。
トヨタ自動車が取り組むカーボンニュートラル燃料の普及にスバルとしても協力する。ただ、カーボンニュートラル燃料はオイルとのなじみがよく、オイルが希釈されてしまうことが特にターボエンジンで課題になるという。ターボエンジンとしてどのような燃料の素性が求められるか、モータースポーツ活動の中で検討する。
スバルの藤貫氏は「スバルは年間100万台程度の非常に小さな会社だ。車両もC〜Dセグメントの狭い領域で展開している。その中で際立つ商品を投入してこられたのは、水平対向エンジンの存在が大きい。FFベースのAWDシステムもコスト面で強みを持つ」と説明。
水平対向エンジンはコンパクトで低重心なのが特徴だが、燃費には課題がある。今後の燃費改善には「飛び道具はない」(スバルの藤貫氏)。「電気で暖機を促進して燃費を改善するなど、細かい積み重ねになっていく。小さな積み上げをいかにきちんと刈り取っていけるかが重要だ」(同氏)。
新しいハイブリッドシステムはシリーズパラレル方式で、トヨタ自動車のTHSのモータージェネレーターなどを採用する。フロントタイヤを駆動するデファレンシャルギア、ハイブリッドユニットの2つのモーター、トランスミッション、後輪にトルクを伝えるトランスファーがオールインワンになったシステムだ。エンジンの全長の短さがカギを握るといい、「エンジンの全長はロータリーでもまだ少し長い」(スバルの藤貫氏)としている。
新しいハイブリッドシステム向けのユニットの生産は、汎用エンジンを作っていた北本工場を活用する。地域との共存、工場のレイアウトやシフトの見直しによる従業員の働きやすさの向上、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、ホワイト物流の実現など、日本の雇用を守ることを重視したコンセプトの工場にしていく考えだ。
マツダ
マツダはロータリーエンジンの重要性を改めて示した。社長の毛籠氏は電動化時代における内燃機関としては「ロータリーエンジンというユニークな技術がある。1990年ごろから水素を燃料として使うなど、環境性能についても研究してきた」と振り返る。
ロータリーエンジンの特徴は小型/軽量/高出力であるとし、燃料に対しては燃えにくいものも燃焼でき、潤滑性のない燃料にも対策が不要な“雑食”であることも強みに挙げた。補機類のレイアウトの自由度も高いため、電動化していく中でスペース効率は大きな優位点になるとしている。これらの特徴は革新的なパッケージやデザインにもつながるとみている。
現在は、ロータリーエンジンの課題であるエミッション適合性の開発に力を入れている。モーターと組み合わせることで、エンジンが得意な領域だけを使って発電したり、エンジンや触媒を暖めて排ガス性能を高めたりすることが寄与するという。
マツダの廣瀬氏は「これまでのビルディングブロック戦略で技術を積み上げてきた結果、EVや内燃機関と電動化の組み合わせの資産がそろってきた。カーボンニュートラル燃料まで含めて取り組みを進める節目に来ているという認識だ。ロータリーエンジンは構造的な特徴ゆえに、これまでは環境規制に対して厳しい状況に直面してきたが、その特徴をアドバンテージにしていく。その例が、システムとしてのコンパクトさだ。幅も高さもコンパクトにできるので、EV専用に設計された車両にも搭載できる。発電量に合わせてローターの数を増やしてもサイズへの影響は少ない」とコメントし、1ローターと2ローターのシステムをそれぞれ紹介した。
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