半導体工場などの施設管理人材を倍速で育成、NECファシリティーズの「FM-Base」:工場ニュース(3/3 ページ)
NECファシリティーズは、千葉県我孫子市の我孫子事業場内に、施設管理人材の研修/研究開発センター「FM-Base(エフエムベース)」を開設し、2024年5月から運用を開始した。
中央監視センターの機能
中央監視センターでは、実機エリアに設置されたIoT(モノのインターネット)センサーにより各設備の状態を確かめられるようにしている。
具体的には、視点変更可能なネットワークカメラで各設備を撮影して得られた映像を映像解析システムで分析することで、制御盤ランプの点消灯とスイッチのオン/オフ、バルブの開閉状態、アナログメータの読み取りおよび検針の自動化を実現している他、映像解析により異常判定された場合には警報が鳴るようにしている。
加えて、各設備に取り付けられた振動センサーや温度センサーといった無線センサーで収集したデータを、ゲートウェイやエッジデバイス、LTE閉域網を介して、同社のデータベース「ファシリティデータプラットフォーム(FDP)」に集積して設備の傾向管理や異常予兆の監視を行っている。これらの機能により中央監視センターでDXに関する研究/開発を実施している。
FM-Baseの研修カリキュラム
このようにFM-Baseでは、実機の構造と動作原理の理解が可能なことに加えて、現場では経験機会が少ない操作や模擬トラブル、メンテナンスを実体験できる。
FM-Baseにおける階層別の研修では、これまで不足していた「シフトリーダー研修」や中途入社向けの「キャリア受入研修」「半導体・電子部品拠点向け研修」が追加されており全9コースの研修を用意している。階層別研修の年間受講可能人数は165人となる。
個別専門研修では全18コースを用意しており年間で140人が受講できる。全18コースのうち特に同社が期待しているのはトラブルシューティング研修と安全/危機体感研修だ。体感型設備を用いた安全/危機体感研修では、VR(仮想現実)安全体感システムや指差し呼称学習安全体感装置を使用して参加者がトラブルの疑似体験や指差し呼称有無でのエラー発生率の差を体験できる。
なお、各コースでは勤続20〜30年のベテラン社員が専任講師を担い、他の業務も並行して行う兼業講師も用意している。
NECファシリティーズでは、FM-Baseを活用することで、新人社員のファシリティリーダーへの育成期間を現状の12年間から6年間に短縮することを目指している。橋谷氏は「これまで施設人材の育成はオンザジョブトレーニング(OJT)のみで行うことが多かった。そのため、新人社員は5年に1回の定期点検でしか設備全体のメンテナンスを体験できなかった他、停電により停止した設備の復旧など、重大トラブルの体験/対応も行えず、施設管理人材の中心となるファシリティリーダーで必要な知識や経験が得られなかった。こういった課題をFM-Baseで解決して施設管理人材の早期育成を推進する。これにより、施設管理の需要を取り込める体制を構築、施設管理事業の収益を1.5〜2倍にしていきたい」とコメントした。
また、当面はNECファシリティーズの施設管理人材を対象にFM-Baseを活用するが、将来は社外の人材の受け入れも予定している。「顧客向けのFM-Base見学会は2024年の夏ごろから開始したいと考えている」(橋谷氏)という。
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