液体をシュッと吹き付ける「スプレーボトル」の仕組み:100円均一でモノの仕組みを考える(1)(3/3 ページ)
本連載「100円均一でモノの仕組みを考える」では、実際に100円均一ショップで販売されている商品を分解、観察して、その仕組みや構造を理解し、製品開発の過程を考察します。連載第1回のお題は「スプレーボトル」です。
スプレーボトルの作られ方/金型構造
このスプレーボトルの部品構成ですが、スプリングと球以外は樹脂製です。樹脂部品のうち、ストローは押出成形、ボトルはペットボトルなどと同じブロー成形という工法で成形されています。他の部品に関しては全て射出成形によって成形されています。
ポンプ本体の金型構造
その中でも、特に複雑な型構造になると思われるのがポンプ本体になります。このポンプ本体の金型構造を簡単に見てみたいと思います。ポンプ本体を簡易的に3D化したものが図7になります。ノズルにつながる穴、ボトルにつながる穴、シリンダーが入る穴の3箇所の穴が空いているのが分かるでしょうか?
この穴がなければ単純に上下の型だけで成形可能ですが、このままではこの穴がアンダーカットになってしまい成形できません(図8)。
3箇所の穴を射出成形で成立させるためには、穴を別の部品で処理する必要があります。3箇所の穴はそれでぞれ異なる方向を向いています。もし、同じ方向を向いていれば1つの部品で済むところですが、別の方向を向いていますのでそれぞれの穴に対して部品が必要になります。図9に示した通り、かなり複雑な構造をしていることが分かるかと思います。
型の構造としては複雑になってしまいましたが、これで型としては成立しますので射出成形による量産が可能です。もちろん、スプレーボトルとしての機能を満たしていることが大前提です。機能と量産性の両面で設計を進めることが必要になります。
ちなみに、このスプレーボトルの機構を使ったものの一つに「水鉄砲」があります。水鉄砲は今回バラしていませんが、スプレーボトルのレバーが、水鉄砲の引き金に相当することは説明せずとも容易にご理解いただけるでしょう。 (次回へ続く)
著者プロフィール:
落合 孝明(おちあい たかあき)
1973年生まれ。株式会社モールドテック 代表取締役(2代目)。『作りたい』を『作れる』にする設計屋としてデザインと設計を軸に、アイデアや現品に基づくデータ製作から製造手配まで、製品開発全体のディレクションを行っている。文房具好きが高じて立ち上げた町工場参加型プロダクトブランド『factionery』では「第27回 日本文具大賞 機能部門 優秀賞」を受賞している。
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