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産業メタバースで変わりゆく都市づくり、進むスマートシティ構築の未来(前編)デジタルツイン×産業メタバースの衝撃(5)(5/5 ページ)

本連載では、「デジタルツイン×産業メタバースの衝撃」をタイトルとして、拙著の内容に触れながら、デジタルツインとの融合で実装が進む、産業分野におけるメタバースの構造変化を解説していく。

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【ユースケース(3)】モビリティ/ロボティクス:3D都市モデルとBIMを活用したモビリティ自律運航システム(車両)(大阪市夢舞地区周辺/横浜市みなとみらい)

 このユースケースでは3D都市モデル上で車両を走行させることで、自動運転に必要な点群マップを自動生成する「PLATEAU PCL Generator」を開発した。ルート作成や仮想車両設定、LiDAR(Light Detection and Ranging)のパラメーター設定などが可能だ。さまざまな都市特性や3D都市モデルのLOD(Level of Detail:詳細レベル)に対応することで、自動運転車両に必要なマップ生成の仕組みを汎用化した。

図8:3D都市モデルとBIMを活用したモビリティ自律運航システム(車両)
図8:3D都市モデルとBIMを活用したモビリティ自律運航システム(車両)[クリックして拡大] 出所:国土交通省

【ユースケース(4)】再生可能エネルギー活用シミュレーション(石川県加賀市)

 再生可能エネルギー導入の検討においても都市3Dモデルが活用されている。都市3Dモデルを活用して、都市スケールの太陽光発電ポテンシャルや反射光公害のシミュレーションを行う。太陽光パネル設置の適地データを地方自治体に提供することで、カーボンニュートラル推進につなげる。3Dモデルを使うことで建物の屋根面積、傾き、隣接建物による日陰発生などの形状情報、建物の用途や構造などの属性情報などを活用している。

図9:PLATEAUデータを活用したユースケース例(太陽光発電のポテンシャル推計、シミュレーション/石川県加賀市)
図9:PLATEAUデータを活用したユースケース例(太陽光発電のポテンシャル推計、シミュレーション/石川県加賀市)[クリックして拡大] 出所:国土交通省

【ユースケース(5)】 観光/地域活性化:歴史/文化/営みを継承するメタバース体験の構築(ANA NEO/京都府京都市先斗町、鴨川/祇園新橋)

 本ユースケースでは、ANA NEOがグローバルに展開するメタバース旅行アプリ「ANA GranWhale」のプラットフォームに、京都市の3D都市モデルを利用したメタバース空間を構築する手法を開発した。一般ユーザー向けメタバースサービスの提供により、歴史的建造物や街並みの価値を発信する。高解像度写真からそのまま3D空間を作成可能なReal in Virtual技術を活用して、3D都市モデルを活用したスマホ向けの軽量かつ高精度なメタバース空間構築技術を作った。ガイドのキャラクターや紹介する店舗などの情報を組み合わせてバーチャル観光コンテンツを開発し、アプリに実装している。

図10:歴史/文化/営みを継承するメタバース体験の構築(1)
図10:歴史/文化/営みを継承するメタバース体験の構築[クリックして拡大] 出所:国土交通省
図11:歴史/文化/営みを継承するメタバース体験の構築(2)
図11:歴史/文化/営みを継承するメタバース体験の構築(2)[クリックして拡大] 出所:国土交通省

生成AIで高精度3Dモデルを自動生成、アップデートする試みも

 3D都市モデルの活用では、構築時や、構築後に都市の変化に合わせて更新し続けていくための手間やリソースを最小化することが重要な課題とされている。また、現在提供されている3D都市モデルの多くは、解像度が低く、道路付帯設備や植栽などのデータも整備されていない。コンシューマーが没入できるクオリティーには達していなかったのだ。

 Project PLATEAUはスペースデータと連携しこれらの課題解決に取り組んでいる。スペースデータ社は、衛星データと3DCG技術を活用してバーチャル空間に現実そっくりの仮想世界を自動生成するAI(人工知能)技術を開発している。

 衛星写真などの画像データに加えて、3D都市モデルを正解データとして機械学習させた「高精度デジタルツインデータ自動生成AI」を開発する。このAIを用いることで、3D都市モデルをインプットデータとして、これに高精度テクスチャの付与や、屋上構造物の生成、看板、信号機、植栽等の都市設備の追加などを自動的に行い、高精度デジタルツインデータを自動生成するシステムを開発した。構築したデジタルツインデータについてはゲームやVR(仮想現実)などのコンシューマー向けコンテンツとして利用可能なようにオープンデータとして配布することで、多様な領域における都市デジタルツインの活用拡大を目指している。

図12:スペースデータ社との3D都市モデル自動生成の実証実験
図12:スペースデータ社との3D都市モデル自動生成の実証実験[クリックして拡大] 出所:PLATEAU

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⇒本連載の目次はこちら
⇒連載「インダストリー5.0と製造業プラットフォーム戦略」はこちら
⇒連載「加速するデータ共有圏と日本へのインパクト」はこちら

筆者紹介

小宮昌人(こみや まさひと)
株式会社d-strategy,inc 代表取締役CEO
東京国際大学 データサイエンス研究所 特任准教授

 日立製作所、デロイトトーマツコンサルティング、野村総合研究所、産業革新投資機構 JIC-ベンチャーグロースインベストメンツを経て現職。2024年4月より東京国際大学データサイエンス研究所の特任准教授としてサプライチェーン×データサイエンスの教育・研究に従事。加えて、株式会社d-strategy,inc代表取締役CEOとして下記の企業支援を実施。

(1)企業のDX・ソリューション戦略・新規事業支援
(2)スタートアップの経営・事業戦略・事業開発支援
(3)大企業・CVCのオープンイノベーション・スタートアップ連携支援
(4)コンサルティングファーム・ソリューション会社向け後方支援

「メタ産業革命」(日経BP)

 専門は生成AIを用いた経営変革(Generative DX戦略)、デジタル技術を活用したビジネスモデル変革(プラットフォーム/リカーリング/ソリューションビジネスなど)、デザイン思考を用いた事業創出(社会課題起点)、インダストリー4.0・製造業IoT/DX、産業DX(建設・物流・農業など)、次世代モビリティ(空飛ぶクルマ、自動運転など)、スマートシティ・スーパーシティ、サステナビリティ(インダストリー5.0)、データ共有ネットワーク(IDSA、GAIA-X、Catena-Xなど)、ロボティクス・ロボットSIer、デジタルツイン・産業メタバース、エコシステムマネジメント、イノベーション創出・スタートアップ連携、ルール形成・標準化、デジタル地方事業創生など。

 近著に『製造業プラットフォーム戦略』(日経BP)、『日本型プラットフォームビジネス』(日本経済新聞出版社/共著)があり、2022年10月20日にはメタバース×デジタルツインの産業・都市へのインパクトに関する『メタ産業革命〜メタバース×デジタルツインでビジネスが変わる〜』(日経BP)を出版。経済産業省『サプライチェーン強靭化・高度化を通じた、我が国とASEAN一体となった成長の実現研究会』委員(2022)、経済産業省『デジタル時代のグローバルサプライチェーン高度化研究会/グローバルサプライチェーンデータ共有・連携WG』委員(2022)、Webメディア ビジネス+ITでの連載『デジタル産業構造論』(月1回)、日経産業新聞連載『戦略フォーサイト ものづくりDX』(2022年2月-3月)など。

  • 問い合わせ([*]を@に変換):masahito.komiya[*]keio.jp

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