船舶技術の最前線! 自律運航に風力アシスト、最新の極地探査船も:船も「CASE」(3/3 ページ)
「SEA JAPAN 2024」が開催された。1994年の第1回から30周年となる今回は、従来の大型商船や貨物船向けの舶用機器と技術展示に加えて、オフショアと港湾技術にフォーカスした「Offshore & Port Tech」も初めて併設された。この記事では、これらの展示から、電子海図や自動操船関連機器、風力アシスト推進、そして、海洋調査に特化した新鋭船に関するものを取り上げる。
JAMSTECの北極域研究船と海上保安庁の新型測量船
SEA JAPANでは舶用機器やゼロエミッションへの取り組みで新世代製品への関心が集まっている機関関連の展示のほかに、新世代艦船や船舶の訴求もされていた。その典型的な例としてJAMSTEC(海洋研究開発機構)が建造を進めている北極域研究船「みらいII」と、海上保安庁の新型測量船「平洋」に関する展示を紹介しよう。
みらいIIは2026年11月の就役を目指して現在建造が進められており、全長128m、総トン数1万3千トン、乗員97人(乗組員34人、研究者技術者など63人)となる予定だ。北極海域の航海で必須となる砕氷能力は「平たん1年氷1.2mを3.0ノットの船速で連続砕氷可能」とされている。
調査船としての能力ではROV(遠隔操作無人探査機)やAUV(自律型潜水調査機器)などの無人探査機器の運用に対応し、海氷などの観測のためヘリコプターの運用機能も備えるとしている。さらにデリケートな環境を守るため、デュアルフューエル機関を採用するなど環境負荷を低減する低燃費の工夫も施すという。加えて、極地調査航海以外でも豪雨などによる自然災害発生時には被災地支援にも運用するとしている。
海上保安庁が測量船を公開する理由
海上保安庁ではSEA JAPAN最終日の12日に国際展示場そばの岸壁で測量船「平洋」の一般公開を実施した。
平洋は2020年1月に就役した海上保安庁最大の測量船で長さ103m、総トン数4000トン。推進器に舵とスクリューが一体化したアジマススラスターを採用して測量船の観測業務で重要な定点保持能力に優れている他、防振防音による高精度観測、電気推進による優れた低速航行能力を有している。
ほぼ同時期の2021年1月には「光洋」も就役して海上保安庁の海洋観測能力は大幅に向上している。平洋も光洋もほぼ同じサイズで船容もほぼ同じだが、搭載する観測機器の違いでその用途は異なっている。平洋はAUVとUSV(無人高機能観測装置)を搭載して主に海底地形を調査するのに対して、光洋は音波探査装置と表層探査装置、採泥器を搭載して海底堆積物や地質構造の調査を実施する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電子海図や自動操舵、救助用ビーコン……小型船舶の最新事情
「ジャパンインターナショナルボートショー2024」が開催された。この記事では、パシフィコ横浜会場の展示から、電子海図や自動操船関連機器、そして、陸とは異なる海洋での利用を考慮したデバイスを取り上げる。 - 「原因究明」「過失捜査」どちらが優先? 海難調査の“法的”事情
航空機事故や海難事案ではしばしば「事故原因調査を優先すべき」「責任処罰捜査を優先すべき」という議論がなされるケースが多い。ここで注意したいのは、事故原因調査と責任処罰捜査は必ずしも相反するものではなく、両方が適切に組み合わせられることが“国際標準の事故調査メソッド”において認められていることだ。それぞれが独立してなされることで、より包括的な事故対応が可能になるとされている。 - ユーザーと開発者が議論、自動運航船開発の“日本らしい進め方”
日本郵船(NYK)グループのMTIは、「Monohakobi Techno Forum 2023」を開催した。このイベントは自動運航船をはじめとする研究開発成果を報告するもので毎年開催されている。 - ヤマ発は海でもCASEに注力、パワートレインはマルチパスウェイで
ヤマハ発動機はマリン事業の長期ビジョンやカーボンニュートラル対応に関する取り組みを紹介するマリン技術説明会を開催した。 - サイバー攻撃で止まった名古屋港、必要なのは驚くほどシンプルな対策
国土交通省港湾局は「コンテナターミナルにおける情報セキュリティ対策等検討委員会」第2回委員会を開催した。この委員会は、2023年7月4日に発生した名古屋港のコンテナターミナルにおけるシステム障害の原因を究明するとともに、再発防止に必要な情報セキュリティ対策について検討することを目的としている。 - 電話対応を半減! アナログな港湾をCyber Portは救えるか
国土交通省は「Cyber Port(サイバーポート)」の活用に向けたWebセミナーを開催した。サイバーポートは、民間事業者間のコンテナ物流手続を電子化して作業の効率化を目指すプラットフォームだ。 - 広島市宇品で自律航行の水上タクシー、対岸や離島に気軽に行ける
エイトノットは2023年1月19日、自律航行システム「AI CAPTAIN」が搭載された小型電動船を広島県広島市内の旅客船運行事業者に納入したと発表した。