パワー半導体の電流測定が正確に、光プローブを用いた電流波形測定用センサー:FAニュース
シチズンファインデバイスは光プローブを用いた電流波形測定用電流センサー「OpECS(オペックス)」を開発したと発表した。主に高いスイッチング周波数でパワー半導体を利用する際に流れる大電流の正確な測定が可能なことを特徴とする。2024年4月下旬から国内で販売する。
シチズングループのシチズンファインデバイスは2024年4月12日、光プローブを用いた電流波形測定用電流センサー「OpECS(オペックス)」を開発したと発表した。主に高いスイッチング周波数でパワー半導体を利用する際に流れる大電流の正確な測定が可能なことを特徴とする。同年4月下旬から国内で販売する。
パワー半導体は電気自動車(EV)や再生可能エネルギー、スマートグリッド、5G基地局などの分野で需要が拡大している。一方、パワー半導体の技術開発には電流測定が必須だが、従来の電流測定器では、パワー半導体の利用で一般的な高いスイッチング周波数の環境下で流れる大電流を正確に測定できず、基板に実装されているものも直接測定できないという課題があった。
そこで同社では光学、成膜、脆性材料加工の技術を融合し、光プローブを用いた磁気光学式の電流センサー「OpECS」を開発した。センサーヘッドに電気部品を使用しておらず、高い周波数において測定可能な電流が制限されるという課題(周波数ディレーティング)が発生しないなどの利点があり、周波数が高い場合でも大電流の正確な測定が可能となった。
OpECSは光プローブのセンサー部とコントロールユニットで構成されている。オシロスコープと接続することで、測定した電流を波形として確認することが可能だ。電流が流れる際に発生する磁界を、磁気光学効果によるファラデー回転(直線偏光を物質に透過させたときに偏光面が回転する現象)を利用して測定し、電流に変換する。
センサーヘッドは光ファイバーと磁性材料のセンサーヘッドでできており、電気部品を使用していないため、電磁ノイズの影響を受けず、誤って大電流を印加しても破損したり感電したりしない。既存の電流波形測定用センサーのように、測定対象物をクランプして測定する必要がなく、光プローブを近接、接触させるだけで、電流を測定する。
光ファイバーの先端部分に配置されたセンサーヘッドは最細で径0.45mmで、基板実装されたパワー半導体のワイヤなど従来の電流波形測定用センサーでは測定不能だった狭所も測定できる。磁気光学効果を用いており、磁気センサーとしても利用可能だ。
主な用途はパワー半導体のボンディングワイヤの電流波形測定、スイッチング損失の測定、バスバーや基板パターンなどの面内波形分布測定の他、インダクターコイルやモーターコイル周辺の磁界測定、コイルの面内磁界分布波形測定、インダクターのフリンジ効果の波形確認などとなっている。
シチズンファインデバイスでは、国内におけるOpECSの提供を、販売特約店契約を締結した岩崎通信機の販売網を通じて行う。
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