ニコンが補修用途向け金属3Dプリンタ発売へ、加工パスは3Dスキャナーで自動生成:金属3Dプリンタ
ニコンは損傷や摩耗したワークの補修を主な目的としたDED方式の金属3Dプリンタ「Lasermeister LM300A」および3Dスキャナー「Lasermeister SB100」を発売することを発表した。
ニコンは2024年4月9日、損傷や摩耗したワークの補修を主な目的としたDED(Direct Energy Deposition)方式の金属3Dプリンタ「Lasermeister LM300A」(以下、LM300A)および3Dスキャナー「Lasermeister SB100」(以下、SB100)を発売することを発表した。
LM300Aは、主に研究開発での使用を想定した現行の「Lasermeister LM100A」シリーズの高い加工精度は変わらず、産業用途向けにより大型ワークの造形が可能になった。SB100は、ワンクリックでワークの自動スキャンおよび加工パスデータの自動生成ができ、このデータを元にLM300Aで造形する。両装置を組み合わせることで、タービンブレードや金型など産業用部品向けの幅広い補修が可能になる。
具体的には、損傷、摩耗したワークをSB100にセットすると、チャンバー内の高精度スキャナーでワークを自動測定する。その後、損傷、摩耗したワークの形状と理想形状(CADデータ)とを照合して差分を抽出し、損傷、摩耗箇所を修復するための加工パスデータを自動生成する。加工パスデータはLM300Aに転送され、DED方式で加工。完了後、ワークをSB100に戻し、理想形状に補修されているかどうかをスキャンして検査する。
LM300Aは、ニコンが半導体露光装置の開発で長年培った高度な光学技術と精密制御技術を活用。タービンブレードの場合、XY軸方向+0〜+0.5mm、Z軸方向+0.5〜+1.5mmの高精度な加工が可能だ。また、溶融池(メルトプール)を常に監視する、メルトプールフィードバック機能がリアルタイムでレーザーパワーを制御し、クラックのない高品質な補修を安定的に行う。LM300Aは、ニッケル基合金(Ni625、Ni718)、ステンレス鋼(SUS316L)、ハイス鋼(SKH51)、チタン合金(64Ti/Ti-6Al-4V)の材料に対応しており、今後、金属材料は順次増やしていく。
従来のタービンブレードの補修は、ブレードごとに摩耗した部分を切削、研削し、その後、溶接で金属に肉盛りし、研磨加工で最終形状に仕上げていた。しかし、この方法では熟練溶接工による長い作業時間が必要な他、切削、研削による廃棄物の発生、補修品質のばらつき、リードタイムの長期化などの課題が生じていた。ニコンの試算では、LM300AおよびSB100を活用することで、補修プロセスにおける溶接工程の作業時間を最大65%削減し、研削や研磨などの後加工を最小化することが可能となる。
LM300Aの装置寸法は1800×1350×2085mmで最大加工寸法はX:297×Y:210×Z:400mm、軸数は3軸となっている。SB100の装置寸法は1040×1350×2085mmで最大スキャンサイズは径330×450mmとなっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 金属3Dプリンタの導入割合や最も多い用途とは、調査で浮かび上がる金属AM動向
MONOist編集部は「金属3Dプリンタ動向調査」を実施した。調査期間は2023年3月9〜22日で、有効回答数は355件だった。本稿ではその内容を抜粋して紹介する。 - AM(アディティブ・マニュファクチャリング)が実製品活用されない国内事情とは何か
新しいモノづくり工法であるAMは、国内でも試作用途では導入が進んできている一方、実製品用途となると全くと言っていいほど活用されていない。本連載では、何がAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。 - 金属3Dプリンタが日本製造業にもたらす影響とは、最新動向と今後の展望
2022年11月8〜13日まで東京ビッグサイトで開催された「第31回 日本国際工作機械見本市(JIMTOF 2022)」において、近畿大学次世代基盤技術研究所 技術研究組合 次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)の京極秀樹氏が「金属積層造形技術の最新動向と今後の展開」をテーマに講演を行った。 - AMを実製品に活用するためには何から取り組めばいいのか
本連載では、何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるか考察する。今回は、AMを実製品に活用するには何からどのように取り組めばいいのかについて考える。 - 金属3DプリンタによるAMで先行する海外勢への日本の対抗策とは何か
本連載では、日本国内で何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるかを考察する。今回は、実製品活用で先行している海外勢への対抗策について考える。 - AM実製品活用に企業はどのように取り組むべきか
本連載では、日本国内で何が金属3DプリンタによるAM実製品活用の妨げとなっており、どうすれば普及を進められるかを考察する。今回は、AMの実製品活用に投資するための企業の考え方、進め方について考える。