B2C製品作りで“攻めの工場”へ、独自構造の「ぬか漬け容器」に映る町工場の狙い:新製品開発に挑むモノづくり企業たち(2)(3/3 ページ)
本連載では応援購入サービス(購入型クラウドファンディングサービス)「Makuake」で注目を集めるプロジェクトを取り上げて、新製品の企画から開発、販売に必要なエッセンスをお伝えする。第2回はMOLATURAのぬか漬け容器「omou」を取り上げる。
B2C製品づくりによってオープンファクトリーも実現
――ところで貴社内に窯など陶器を作る設備はなかったのではと思いますが、この点はどうしているのでしょうか。
山添氏 これまでは友人の窯元に陶器製造を依頼していましたが、萬古焼は作り手の高齢化が深刻化しており、あと10年もすれば作り手がいなくなるといわれています。そのため、数年前に社内に窯も型も導入しました。それらの設備は、2023年に「作る・見る・食べる」をテーマとする「中村製作所(MOLATURA)オープンファクトリー」で公開しています。
実はこのオープンファクトリーも、私たちがやりたかったことの1つです。もともとは「製造工程を多くの人に見せられる、ガラス張りの工場を作りたい」という思いもあったのですが、本業のB2Bのモノづくりでは顧客との守秘義務のため非公開にせざるを得ない工程が多く含まれます。でも自社製品づくりの工程であれば、見せても問題ありません。
best potなどの自社製品で調理や盛り付けを行った料理を提供するカフェも併設しています。当社製品、ひいてはモノづくりの良さを感じてもらえる仕掛けを多く用意しており、来場者からは「単に見学するだけではなく、さまざまな体験ができる」と好評をいただいています。
――今後の展望についてお教えください。
山添氏 omouに関しては購入総額が130万円を突破(2024年2月末時点)して、学生さんと組んで生まれたアイデアがそれだけ世の中から認められたということを僕たち自身、非常にうれしく思っています。今後はMakuakeさんで購入されたお客さまからの要望も聞きながら、商品化を検討していきたいです。
加えて、当社としては今後インバウンドに力を入れていきたいと考えています。オープンファクトリーには、特に2025年の大阪・関西万博のタイミングで各国の方々にぜひ来てほしいです。
オープンファクトリーは自社のためだけではなく、四日市に人を呼ぶ観光地として機能してほしいと考えています。すでに四日市市や三重県の観光協会と連携して、茶畑や工場夜景などとの周遊プランの作成も始めています。町工場と同じで、まずは四日市の良さを知ってもらわないと始まりません。私たちもそのプロモーションの役割を担う存在の1つでありたいと思っています。
⇒連載「新製品開発に挑むモノづくり企業たち」のバックナンバーはこちら
⇒記事のご感想はこちらから
筆者紹介
長島清香(ながしま さやか)
編集者として地域情報誌やIT系Webメディアを手掛けたのち、シンガポールにてビジネス系情報誌の編集者として経験を重ねる。現在はフリーライターとして、モノづくり系情報サイトをはじめ、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ⇒連載「新製品開発に挑むモノづくり企業たち」のバックナンバーはこちら
- 宇宙の断熱保冷技術を地上でも、小型なのに長期温度維持可能な輸送コンテナ
JAXAの開発した断熱保冷技術。これを宇宙だけでなく“地上”でも役立てようとするスタートアップが存在する。「JAXAベンチャー」のツインカプセラだ。 - 切削加工コンテスト受賞作品を発表
DMG森精機は、「第15回切削加工ドリームコンテスト」の受賞作品を発表した。日本国内で加工業に携わり、切削型工作機械、先端加工機を使用している企業、学校、研究機関を対象にしたコンテストとなる。 - キヤノンの「PowerShot ZOOM」はリーン&共感型開発で生まれた
キヤノンが発表した「PowerShot ZOOM」は、“ポケットに入る望遠鏡型カメラ”という新しいコンセプトに加え、オープン型の開発を採用するなど、異色尽くしの製品だ。企画背景からデザイン、設計開発の工夫などについて開発陣に話を聞いた。 - まだあるよ。加工屋泣かせの形状コレクション
そのアンダーカットの形状、どうしても切削加工ではないとダメ? 5軸加工すればいいかもしれないけど……。 - 靴内センサーを小型化せよ、ベンチャーが挑む未経験のスマートシューズ作り
オープン6年目を迎えた東京・秋葉原の会員制モノづくり施設「DMM.make AKIBA」で社会課題を解決しようと奔走しているスタートアップを追いかける連載「モノづくりスタートアップ開発物語」。第4回はスマートシューズを開発しているno new folk studioのCEO 菊川裕也氏に、開発経緯などを聞いた。 - 精密切削加工で作られた金属製メカニカルベーゴマに入門モデル登場
スピニングトップは、CNC複合旋盤を用いた精密切削加工技術によって製造した金属製組み立て式メカニカルベーゴマ「メカベー」シリーズのエントリーモデル「メカニカル・ベイ」を2021年9月1日から販売開始する。