ニュース
極低温下に置いたクライオCMOS回路で量子ビット駆動に成功:組み込み開発ニュース
富士通は、オランダの量子技術研究機関QuTechと共同で、ダイヤモンドスピン方式の量子コンピュータに用いる量子ビットを制御する電子回路を、極低温で動かす技術の開発に成功した。
富士通は2024年2月20日、オランダの量子技術研究機関QuTechと共同で、ダイヤモンドスピン方式の量子コンピュータに用いる量子ビットを制御する電子回路を極低温で動かす技術の開発に成功したと発表した。
今回開発した技術では、QuTechのクライオCMOS回路技術やダイヤモンドスピン量子ビットに関する技術を活用している。ダイヤモンドスピン量子ビット駆動に必要な磁場印加回路やマイクロ波回路をクライオCMOS回路技術で設計することで、4Kの温度環境でのダイヤモンドスピン量子ビットの実装に成功した。
量子ビットが正確に動作するには、−268℃以下の極低温に下げる必要があるが、量子を制御する電子回路を極低温下で制御するのは困難だった。電子回路を冷凍機の外に設置する必要があったため、配線が複雑化していた。
クライオCMOS回路は極低温に対応することから、これを応用して磁場印加回路とマイクロ波回路を設計。これらを量子ビットと同じ冷凍機内に設置して動作することで、ダイヤモンドスピン量子ビットの駆動に十分な強度の磁場とマイクロ波を発生させ、量子ビットの駆動に成功した。
同技術により配線を単純化できるため、高性能かつ大規模集積した量子コンピュータを構築可能になる。将来的には、電子回路を量子ビットプロセッサと直接接続し、量子コンピュータのスケーラビリティとパフォーマンスの両立が期待できる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 量子コンピュータに新たな道を開くか、電子の飛行量子ビット動作を世界初実証
NTTとフランスのCEA Saclay、NIMS、KAISTは、グラフェンのp-n接合と、ローレンツ波形の電圧パルスによって生成される単一電子源のレビトンを用いることで、電子の飛行量子ビット動作を世界で初めて実証したと発表した。 - 量子ビットを動かせばいい、シリコン量子計算機の課題を解決する常識外れの新方式
日立製作所はシリコン量子コンピュータについて、従来より効率良く量子ビットを制御できる新方式「シャトリング量子ビット方式」の効果を検証したと発表した。 - 超伝導磁束量子ビットを用いて神経細胞中の鉄イオンの検出に成功
日本電信電話と静岡大学は、10μm程度の超伝導磁束量子ビットを高感度、高空間分解能磁場センサーとして利用することで、単一細胞相当の空間分解能で神経細胞中の鉄イオンの検出に成功した。 - IBM、433量子ビットの量子プロセッサ「IBM Osprey」を発表
IBMは、433量子ビットを有する量子プロセッサ「IBM Osprey」を発表した。同社の量子プロセッサの中で最大の量子ビット数を有し、より複雑な量子計算を実行できる。 - 量子コンピュータのCMOSへ、東芝がダブルトランズモンカプラで精度を大幅向上
東芝が超伝導回路を用いたゲート方式量子コンピュータの高速化と精度向上を可能にする可変結合器の新構造「ダブルトランズモンカプラ」を考案した。量子コンピュータの基本操作の一つである2量子ビットゲートについて、24nsという短いゲート時間で99.99%という高い精度(誤り確率0.01%)のゲート操作が可能になるという。 - IBMは最大数十万量子ビットの量子コンピューティング実現目指す
IBMは、大規模かつ実用的な量子コンピューティングの実現に向け、新たな開発ロードマップを公開した。量子システムの量子ビット数を最大数十万ビットに拡大するため、個々が接続可能なモジュール式アーキテクチャの開発を計画する。