NEDOがフレキシブル基板に2次元材料を転写できる機能性テープを開発:研究開発の最前線
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、2次元の原子シートを転写する機能性テープを開発した。フレキシブル基板をはじめ、プラスチックやポリマーのようなさまざまな素材や形状のモノに対応する。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2024年2月13日、2次元の原子シート(2次元材料)を転写する機能性テープ(UVテープ)を開発したと発表した。NEDO先導研究プログラムとして、九州大学および日東電工と共同で開発に取り組んでいた。
転写に成功した最大サイズは直径10cmのグラフェン
同技術には、紫外線(UV光)で粘着力が約10分の1に低下するUVテープを用いる。粘着力が強い状態のUVテープを、グラフェンなどの2次元材料を形成した基材に接着し、UV光を照射。電気化学剥離で基材を分離すると、UVテープに2次元材料が貼付した状態となる。このテープはUV光により粘着力が弱められているため、任意の場所に貼り付けてはがすと、テープのみが剥落し2次元材料が転写できる。
転写に成功した最大サイズは直径10cmのグラフェンで、転写率は最高で99%に達した。転写による2次元材料のダメージや汚れは少なく、特性への影響はない。半導体や絶縁性の2次元材料にも適用でき、複数の2次元材料を重ねた積層構造を作ることも可能だ。
従来の高分子保護膜による転写が不可能だったフレキシブル基板をはじめ、プラスチックやポリマーのようなさまざまな素材と形状のモノに対応する。研究では、プラスチックに転写したグラフェンを用いてテラヘルツ(THz)波のセンサーを作成し、正常に動作することを確かめた。
UVテープを転写したグラフェンを用いたTHz波のセンサー。(a)プラスチック上の単層グラフェンのセンサー、(b)封筒に入れる前のナイフと紙片、(c)グラフェンを用いて検出した封筒の中のナイフと紙片[クリックで拡大] 出所:新エネルギー・産業技術総合開発機構
2次元材料の転写に要するコストと時間を削減し、簡便で適応性に富むことから、2次元材料の研究活性化が期待される。次世代半導体への応用を視野に、より大きなウエハーレベルでの転写技術の確立を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 世界最高クラスの高出力密度のGaN HEMTを開発
住友電工は、NEDOが委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環で、新規結晶技術を用いて従来比で2倍となる高出力密度を実現した窒化ガリウムトランジスタを開発したと発表した【訂正あり】。 - ドイツでハイブリッド蓄電池システム事業を実証、PCR供給で約95%の落札を達成
NEDOはドイツで実施したハイブリッド蓄電池システム実証事業の成果と今後の展望について発表した。 - NEDOが重レアアースの安定確保に向け、未使用資源から分離精製する技術開発に着手
新エネルギー・産業技術総合開発機構は、未使用の資源や使用済み部素材から重レアアースを分離精製する技術開発をテーマとして採択した。2023〜2027年度までの5年間で、総額17億6000万円の事業規模となる。 - ミライ化成が再生炭素繊維の回収/加工システムの販売を構想、中国展開も視野に
ミライ化成は「SANPE Japan 先端材料技術展2023」で再生炭素繊維事業の取り組みを紹介した。 - 再エネがポストコロナ社会で最重要の技術革新領域に、NEDOが調査結果を発表
NEDOはコロナ禍前後での、社会変化に関する調査結果に基づいたレポート「ポストコロナ社会でのイノベーション像」を発表した。 - 重要なCO2削減技術のポテンシャルとコストの算出式を示すNEDO総合指針2023を策定
NEDOは「持続可能な社会の実現に向けた技術開発総合指針2023(NEDO総合指針)」を策定したと発表した。