検査機を軸に食品/飲料産業のモノづくりをDX、Catena-Xとの接続デモも:IIFES 2024(2/2 ページ)
オムロンは「IIFES 2024」において、同社のモノづくり革新コンセプト「i-Automation!」に基づいた、制御技術やAI、現場データ活用などを駆使した各種のソリューションを展示した。
保全DXで高レベルの予兆保全を実現
生産性向上のためには、いかに設備を止めないかもカギとなる。ブースではオムロンのセンシング技術を生かした保全DXソリューションも展示した。部品を組み立て、乾燥し、包装する工程を模擬したラインとなっており、各機器には状態監視センサーが付けられている。
「われわれはこれまでに500社以上の現場を見てきて、FAなら43の装置を見ておけば大体網羅できることが分かっている。43の装置には主に56種類の異常が現われ、それらをチェックするために何をセンシングし、そのデータからどのような特徴量を見いだせばいいかも把握している。さらにその特徴量の演算機能まで実装しており、質のいいデータに変換して上位に上げることができる」(オムロンの説明員)
デモラインでは圧入機に軸のずれが発生しており、設備の異常をインターネット経由でブラウザ画面上で確認できるリモート状態監視システムや、異常発生時に過去の保全履歴をすぐに参照して復旧までの時間を短縮する保全ナレッジマネジメントシステム、異常の兆候から関連する要因を探し出して異常特定を高速化する保守サポート機能といった開発中の機能も紹介した。サーボモーターの監視では50ミリ秒ごとに約400個の特徴を演算しているという。紙の保全履歴もOCR(光学文字認識)によってデータに取り込めるようにする予定だ。
オムロンがNTTコミュニケーションズ、コグニザントジャパン、ソルティスターとともに取り組んでいる製品サプライチェーンのカーボンフットプリント(CFP)に関する実証実験についても紹介した。2024年3月からの実証実験では血圧計、制御機器向け電源、リレーの3つの製品に関して、CFPの算出だけでなく、エネルギー使用量の削減とモノづくりの生産性や品質とともに生産量を高めるエネルギー生産性向上プラットフォームの創出に取り組む。さらに国際標準に準拠した企業間データ連携を想定し、日本の製造業として初めて、グローバルデータ流通基盤「Catena-X」に接続する。
ブースでは遠隔地のデモラインから送られてきたデータを使って1個当たりのCFPなどを算出し、実際にCatena-Xに接続する様子を紹介した。
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 本部長の大場恒俊氏は「排出量の算出方法1つとっても、どうすればグリーンウォッシュ(実態が伴っていない環境活動)に見られないかなど、外部と相談しながら進めていくのが大変だった。われわれが非常にやりにくかった、分かりにくかった点を、もっと簡単に進められるようにデモでお見せしたソフトウェアに少しでも組み込んでいこうとしている。実証実験を通して、ミニマムのパッケージが作ることができればと考えている」と語る。
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