ルネサスが史上最大規模の買収、ECAD大手のアルティウムを約8880億円で:組み込み開発ニュース
ルネサス エレクトロニクスは、プリント基板設計ツール(ECAD)大手のアルティウム(Altium)を買収すると発表した。買収金額は91億オーストラリアドル(豪ドル)、日本円に換算して約8879億円で、ルネサス史上最大規模の企業買収となる。
ルネサス エレクトロニクスは2024年2月15日、プリント基板設計ツール(ECAD)大手のアルティウム(Altium)を買収すると発表した。買収金額は91億オーストラリアドル(豪ドル)、日本円に換算して約8879億円で、ルネサス史上最大規模の企業買収となる。今回の買収契約は、両社の取締役会において全会一致で承認されており、規制当局の承認などを経て2024年下半期中に買収を完了する予定である。
今回の買収では、アルティウムが上場しているオーストラリア市場の株式を100%取得する方法の一つである豪州会社法に基づくSOA(Scheme of Arrangement)の手続きの下でルネサスがアルティウムの全株式を現金で取得する予定だ。なお、買収完了後もアルティウムはルネサスの100%子会社として存続し、現在のCEOであるAram Mirkazemi氏が引き続き経営を担う予定である。
ルネサスは買収資金を銀行融資および手元の現金で調達する予定。買収により、キャッシュフローに対する有利子負債の倍率を示すEBITDA有利子負債倍率は2.1倍となるが、3年後の2027年までに1倍以下に低下させることを見込んでいる。
インターシル、IDT、ダイアログの買収との違いは
アルティウムは1985年にオーストラリアで創業したECADベンダーだ(現在の本社は米国カリフォルニア州サンディエゴ)。主力製品の「Altium Designer」については「現在世界で最も使用されている」(ルネサスのニュースリリースより)としており、図研、ケイデンス(Cadence Design Systems)、シーメンスEDAなどと並ぶECADの有力企業である。
2023年6月期の業績は、売上高が2億6329万米ドル(約396億円)、EBITDAマージンが36.5%で、従業員数は約850人。ライセンス形態がサブスクリプション契約となるAltium Designerに加えて、電子機器設計のクラウドプラットフォーム「Altium 365」や、電子機器の設計に最適な電子部品検索エンジン「Octpart」なども展開しており、売上高のリカーリング比率は77%に達している。ルネサスは2023年6月に、同社内で使用しているECADをクラウドベースのAltium 365に統一したことを発表するなどアルティウムとの連携を深めてきた。
これまでのルネサスの大型買収と言えば、2017年発表のインターシルの約32億米ドル、2018年発表のIDTの約67億米ドル、2021年発表のダイアログ(Dialog Semiconducotor)の約48億ユーロなど半導体メーカーが中心だった。今回のアルティウムの買収は、買収時点の日本円換算で最大規模になったことに加え、主力事業である半導体のポートフォリオや技術を拡充するのではなく、ECADというソフトウェアソリューションが対象になった点も含めて注目度は高い。
ルネサス 代表取締役社長兼CEOの柴田英利氏は「アルティウムの買収により、ルネサスは今後、統合されたオープンな開発プラットフォームを提供することが可能になる。われわれの狙いは、あらゆる規模や業種のユーザーが容易に電子システムを構築/拡張できるようにすることだ。アルティウムのチームとともに、今後この新たなプラットフォーム実現に向けた投資および開発を続け、顧客に進化した価値をもたらすことを楽しみにしている」と述べている。
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