思春期の希死念慮リスクに関係する精神症状が明らかに:医療技術ニュース
東京大学は、思春期児童の持続的な引きこもり症状と身体不調の増加は、どちらも希死念慮リスクと関係することを明らかにした。精神症状の経時変化を同時に分析した結果、それぞれの症状が思春期の自殺予防に重要であることが示唆された。
東京大学は2024年1月26日、思春期児童の持続的な引きこもり症状と身体不調の増加は、どちらも希死念慮リスクと関係することを明らかにしたと発表した。また精神症状の経時変化を同時に分析した結果、それぞれの症状が思春期の自殺予防に重要であることが示唆された。東京都医学総合研究所との共同研究による成果だ。
今回の研究は、東京ティーンコホートに参加する一般思春期児童のうち、10歳、12歳、16歳時に2回以上精神症状を評価された2780人を対象に実施した。東京ティーンコホートは、東京都内の3つの自治体に居住する、思春期児童とその養育者を対象とした大規模疫学研究だ。
精神症状は、引きこもり症状、身体不調、不安抑うつ症状、社会性の問題、思考の問題、注意の問題、非行的行動、攻撃的行動の8種類ついて、養育者へのアンケート調査により評価した。希死念慮については、16歳時に本人への質問票で評価。「死にたい」という積極的希死念慮と「生きていても仕方がない」という消極的希死念慮のうち、消極的希死念慮を調査した。
各精神症状をクラスタリングし、経時変化のパターンの違いから思春期児童を「症状なし」「持続」などにグループ分けした。その結果、持続する引きこもり症状と増加する身体不調のグループのみが、希死念慮と関係していた。また、この2つと希死念慮の関係は、それぞれ独立したものだった。
今回の結果から、持続する引きこもり症状や増加する身体不調が思春期の自殺予防に重要であることが示唆された。引きこもり症状や身体不調は、不安抑うつ症状などよりも周囲の人が見つけやすい。思春期児童と関わる人がこれらの症状に注意を払い、自殺予防のための支援につなげていくことが期待される。
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