中国BLTの金属3Dプリンタ導入、オリックス・レンテックの体験拠点がリニューアル:金属3Dプリンタ
オリックス・レンテックは東京技術センター内にリニューアルオープンした金属3Dプリンタの体験拠点「Tokyo 3D Lab.」を報道陣に公開した。
オリックス・レンテックは2024年2月13日、東京技術センター(東京都町田市)内にリニューアルオープンした金属3Dプリンタの体験拠点「Tokyo 3D Lab.」を報道陣に公開した。
1976年創業の同社ではPCや計測機器、分析機器などの精密機器のレンタル事業を手掛けており、レンタル資産は4万種類、280万台に上り、40万台を常時保管している。レンタル事業では返却後のPCのデータ消去や機器の校正などが欠かせないため、同社は日本国内には東京技術センターの他、相模原技術センター(相模原市中央区)、神戸技術センター、神戸第2技術センター(いずれも神戸市須磨区)、西日本試験センター(兵庫県尼崎市)の技術拠点を設けている。豊富な設備とノウハウを生かして、ユーザーの持つ測定器の校正や製造した製品の品質試験などを請け負うサービスも行っている。
3Dプリンタ事業は2015年からスタートし、金属や樹脂の3Dプリンタで試作品や治具などを受託造形する3Dプリンタ出力サービスや3Dプリンタの導入支援サービス、レンタルサービスを展開。また、同年に東京技術センター内にドイツのEOS製の金属3Dプリンタ「M290」を導入し、金属3Dプリンタの体験拠点としてTokyo 3D Lab.を開設した。出力サービスでは2023年3月末までに3200件の引き合いがあり、1800件の受注につながっている。
3Dプリンタ事業としては2023年度からの5年間で100億円の売り上げを目指す。同社 常務執行役員 技術本部長の松野城太郎氏は「親会社であるオリックスにはエンジニアリングの機能はないが、われわれはマルチベンダーとしてよい製品であればどのメーカーも取り扱うことができ、さまざまなメーカーの製品を組み合わせて提供することもできる。金属3Dプリンタを購入すると億円単位の投資になる。われわれは、ユーザーに3D CADデータさえ作っていただければ、それを造形してロジスティクス網を生かしてお届けすることができる」と語る。
また、2023年には3Dプリンタの造形シミュレーションサイト「3D-FABs」を開設した。このサイトは、3D CADデータをアップロードし、材料や造形方法などを選択すると、造形を委託した際の概算費用を試算でき、3Dモデルの欠陥や造形時の懸念点があれば知らせてくれる。金属ではPBF(粉末床融解結合)、樹脂ではFFF(熱溶解積層)、SLA(光造形)、SLS(粉末焼結積層造形)の各方式が選択可能で、材料はステンレスやアルミニウムなど10種類から選ぶことができる。それ以外の方式、材料も個別対応が可能という。3D-FABsを通して既に10件以上の受注が生まれている。
オリックス・レンテックでは2023年に中国のXi'an Bright Laser Technologies(BLT)の金属3Dプリンタ「S320」を新たに導入したのに伴い、東京技術センター内にTokyo 3D Lab.を移転し、面積も約2倍に拡張した。BLTは自社で340台の金属3Dプリンタを保有し、Airbus向けの航空機部品の造形も手掛けるなど高い技術力を持つことで知られている。BLTによれば、同社の金属3Dプリンタを実機検証用として常設するのはTokyo 3D Lab.が日本で初めてだという。
オリックス・レンテック 事業開発部 副部長で3Dプリンター事業推進チームリーダーを務める袴田友昭氏は「3Dプリンタ事業はわれわれが持つ製造業の顧客基盤と、これまで培ってきた技術/品質基盤、ユーザーに届ける配送基盤を生かしてスタートした新規事業となる。メーカーではないため、ユーザーが実際に試して導入するまでをサポートするのがわれわれのビジネスモデルだ。2023年度末までには出力サービスの引き合いは約3800件、受注も約1900件に達する見込みだ」と話す。
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