金属3Dプリンタの活用進む欧州で探る機会、微細加工技術との組み合わせで強み発揮:ハノーバーメッセ2023
東レ・プレシジョンは「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)2023」(2023年4月17〜21日:ドイツ時間、ハノーバーメッセ)において金属3Dプリンタを活用したワークを多数展示した。
東レ・プレシジョンは「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)2023」(2023年4月17〜21日:ドイツ時間、ハノーバーメッセ)において金属3Dプリンタを活用したワークを多数展示した。
精密部品の加工などを手掛ける東レ・プレシジョンでは海外の顧客開拓のため、2018年、2019年とハノーバーメッセに出展し、コロナ禍の中断を挟んで今回で3回目の出展となる。東レ・プレシジョン 関東営業所長 兼 関東営業部長の吉村太志氏は「世界のどんな分野にどんなアイテムがあるか、狙いを定める位置付けとして捉えている。半導体や水素関連など、海外のハイエンドなメーカーとつながりたい」と狙いを話す。実際に、ドイツの政府系機関から燃料電池関係の受注に結び付いたこともあるという。
今回は金属3Dプリンタを活用したワークを中心に出展した。欧米は日本に比べて金属3Dプリンタの利用が広がっている。「欧米では設計、デザインの時点でアイデアの1つとして金属3Dプリンタを持っている。ただ、金属3Dプリンタは造形してすぐに使えるわけではなく、2次加工で仕上げる必要がある。そこにわれわれの持つ精密加工の技術が生かせるのではないかと期待している」(吉村氏)
日本でも航空宇宙の分野では金属3Dプリンタの活用が始まっているという。2018年に打ち上げられた太陽観測ロケット「FOXSI-3」は、太陽コロナからの軟X線を集光撮像分光観測することに成功したが、このロケットに搭載された観測機器の部品であるプレ・コリメータ(迷光遮蔽構造体)は東レ・プレシジョンが金属3Dプリンタを用いて製作した。ブースでは、使用されたプレ・コリメーターと同じ形のワークを展示した。軽さを考慮して材質はチタンになっている。造形には1週間以上要したという。2024年に打ち上げられる「FOXSI-4」にも採用が決まっている。その他にも従来、複数に分かれていた部品の金属3Dプリンタでの一体造形も行われている。
金属3Dプリンタで造形したクローズドインペラー、オープンインペラーも展示した。造形しただけのワークと、仕上げを行ったワークを並べて出品した。インペラーは遠心力ポンプなどに使われ、通常は5軸制御マシニングセンタで切削する。今回のクローズドインペラーは金属3Dプリンタによる造形に加えて、機械加工と流体研磨で仕上げを行った。
合成繊維紡糸用ノズルなど、同社が得意とする精密加工のサンプルワークも出展した。名刺大の金属片にレーザー加工で描かれた2次元コードをスマートフォンのカメラで読み込むと、その技術を紹介した同社のWebサイトを開くことができる仕掛けになっている。同社の売上高の半分ほどを占める、半導体製造装置関連の部品も多数展示した。展示物は機械加工によるものだが、海外の半導体製造装置メーカーでは数百種類の部品の製造に金属3Dプリンタを導入しているという。吉村氏は「残りのハノーバーメッセの会期も、われわれの技術が生きる分野、アイテムの発掘に努めたい。そして見つけた分野、アイテムに対して、ニッチな領域で強みを発揮して海外展開を強化したい」と意気込みを語る。
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