AGCの2023年通期業績は減収減益、塩ビ販売価格下落や製造原価の悪化が影響:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
AGCは2023年12月期通期(1〜12月)決算と2024年12月期通期業績の見通しを発表した。2023年通期の売上高は前年同期比0.8%減の2兆193億円で、営業利益は同29.6%減の1288億円となった。塩化ビニールの販売価格の下落やライフサイエンスセグメントの受託売上減少、製造原価の悪化などで減収減益を記録した。
2024年12月期通期業績の見通し
2024年12月期通期業績の売上高は前年比3.9%増の2兆1000億円で、営業利益は同16.4%増の1500億円になる見通しだ。増収増益の要因としては電子、ライフサイエンスの復調などを挙げている。
セグメント別では、建築ガラスセグメントの売上高は同3.4%減の4600億円で、営業利益は8.5%減の300億円となる見通しだ。欧州では景気低迷の影響を受けるものの、エネルギー削減のための高断熱ガラスへの置き換え需要がAGCの出荷を下支えすると見込む。日本/アジアでは、高断熱/遮熱ガラスの需要拡大などにより、同社の出荷は堅調に推移する見込みだ。
オートモーティブセグメントの売上高は同2%増の5100億円で、同5.5%増の230億円となる見通しだ。自動車生産台数と同社の自動車用ガラスの出荷は前年並みを見込んでいる。また、価格政策や従来より取り組んでいる構造改革の効果が発現する見通しだ。
電子セグメントの売上高は同5.3%増の3300億円で、営業利益は同79.3%増の330億円になると見込んでいる。ディスプレイのうち、液晶用ガラス基板は収益改善策の推進に加え、需要の回復により収益が改善する見通しだ。ディスプレイ用特殊ガラスは、スマートフォン市場の回復および同社の主要な顧客からの受注が拡大し、出荷が増加する見込み。
電子部材のうち、EUV露光用フォトマスクブランクスなどの半導体関連製品は出荷が増加する見通しだ。オプトエレクトロニクス用部材は、スマートフォン市場の回復により、出荷は堅調に推移するとみている。
化学品セグメントの売上高は同7.9%増の6200億円で、営業利益は同7.4%増の600億円になる見通しだ。エッセンシャルケミカルズでは、同社の出荷は堅調な推移となるが、市況低迷の影響を受けるとみている。パフォーマンスケミカルズでは、半導体向け、輸送機器向けフッ素関連製品の需要増により、同社の出荷は増加する見込みだ。
ライフサイエンスセグメントの売上高は同10.4%増の1400億円で、営業利益は同124%増の30億円になるとみている。合成医農薬の受託売上は前年並みとなる見込みだ。バイオ医薬品は、バイオベンチャーへの資金流入減の影響を受けるものの、立ち上げが遅延していた米国新規ラインの商用運転再開などにより、前年に比べ受託売上が増加するとみている。
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