AGCの2023年初は増収減益、高砂事業所で液晶用ガラス基板の生産を終了し収益改善:製造マネジメントニュース(1/2 ページ)
AGCは、2023年12月期第1四半期の売上高は前年同期比165億円増の4892億円となるも、営業利益は同235億円減の342億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は同85億円減の221億円となったと発表した。
AGCは2023年5月12日、オンラインで会見を行い、2023年度(2023年12月期)第1四半期(1〜3月)の決算と2023年度通期の業績見通しについて説明した。
化学品事業は塩ビ樹脂の販売価格下落などで減収減益
2023年度期第1四半期の売上高は前年同期比165億円増の4892億円となるも、営業利益は同235億円減の342億円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は同85億円減の221億円となった。
売上高は塩化ビニール樹脂の販売価格下落の影響を受けたものの、建築用ガラスや自動車用ガラスなどの販売価格の上昇や為替の影響で前年同期比で増収した。営業利益は製造原価の悪化および原燃材料高などの影響から前年同期比で減益となった。
セグメント別では、化学品事業は、塩化ビニール樹脂などのエッセンシャルケミカルズの販売価格が下落した。フッ素関連製品をはじめとするパフォーマンスケミカルズの出荷も減少したが為替の影響により増収した。売上高は同207億円減の1410億円で、営業利益は同234憶円減の172億円となった。
AGC 副社長 執行役員 CFOの宮地伸二氏は「東南アジアでは、2023年12月期第1四半期に、米国や中国を中心とした景気回復の遅れを背景に化学薬品の苛性ソーダ市況が下落したが、塩化ビニール樹脂の市況は2022年末をボトムに緩やかな回復基調にあり、スプレッド(主原料と製品市況の価格差)も緩やかに回復した」と話す。
電子事業では、液晶用ガラス基板とディスプレイ用特殊ガラスの出荷が減少しただけでなく、原燃材料高と設備の稼働率低下により製造原価が悪化した。一方、電子部材では、半導体関連製品の出荷が堅調に推移し、為替も好影響を及ぼし増収した。売上高は同57億円減の702億円で、営業利益は61億円減の19億円となった。
宮地氏は「2022年は巣ごもり需要の反動によるパネル需給の調整や原燃材料の高騰/急激な円安の進行でディスプレイ事業が低迷した。そこで、ディスプレイ生産の統廃合の一環として国内生産を大幅に縮小するために、関西工場高砂事業所(兵庫県高砂市)での液晶用ガラス基板製品の生産を2023年末までに終了する。これによりROCE(使用資本利益率)10%の達成に向けディスプレイ事業を再生していく」と述べた。
オートモーティブ事業では、自動車生産台数の増加により、AGCグループの自動車用ガラスの出荷が増えた他、販売価格の上昇や品種構成の改善、為替の影響もあり増収した。売上高は同249憶円増の1184億円で、営業利益は同81億円増の48億円となった。
ライフサイエンス事業では、新型コロナウイルス感染症関連製品の特需消失に伴いバイオ医薬品の受託が減少したが、為替の影響により売上高は前年並みだった。しかしながら、バイオ医薬品分野に向けた能力増強による先行費用などが発生。売上高は前年同期と同じ332億円で、営業利益は同39億円減の6億円となった。「短期的には、新型コロナウイルス感染症特需の消失や米国での急激な利上げ、シリコンバレーバンクの経営破綻に端を発した金融不安からバイオベンチャーへの資金流入減の継続を懸念している。当社は中小のバイオベンチャー企業との取引が多いため、主にバイオ製品開発の初期案件の受注が鈍化するとみている」(宮地氏)。
建築ガラス事業では、景気減速の影響を受けた欧州で出荷が減少したが、販売価格の上昇や為替が作用し欧米で増収した。アジアでも日本を除く地域で出荷が減ったが増収した。売上高は同165億円増の1205億円で、営業利益は同20億円増の90億円となった。
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