米国政府のAI駆動型保健医療DX推進策とDFFTの関係性:海外医療技術トレンド(103)(1/3 ページ)
本連載第23回や第65回で米国保健医療行政当局のIT戦略やDXを取り上げたが、データ駆動型からAI駆動型への進化に向けた動きが本格化している。さらに、日本が提唱してきたDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)をも取り込もうとしている。
本連載第23回や第65回で米国保健医療行政当局のIT戦略やDX(デジタルトランスフォーメーション)を取り上げたが、データ駆動型からAI(人工知能)駆動型への進化に向けた動きが本格化している。
米国FDAが責任あるAI利用を組み込んだIT戦略を策定
2023年9月13日、米国保健福祉省(HHS)傘下の食品医薬品局(FDA) DX室は、「2024〜2027会計年度FDA情報技術戦略」を公表した(関連情報)。
もともとFDAは、本連載第65回で触れた「技術モダナイゼーション行動計画(TMAP)」(2019年9月18日、関連情報)に加えて、「データモダナイゼーション行動計画(DMAP)」(2021年3月3日、関連情報)、「エンタープライズモダナイゼーション行動計画(EMAP)」(2022年5月19日、関連情報)、「リーダーシップモダナイゼーション行動計画(LMAP)」(2022年12月21日、関連情報)の原則に基づいて、FDAモダナイゼーションフレームワークを策定していた。今回公表した戦略は、「2023〜2027会計年度処方箋薬ユーザーフィー法(PDUFA)再授権のパフォーマンス目標と手順(PDUFA VII)」(関連情報)と2023会計年度包括調整法で示された、FDA全体に渡るIT戦略計画を策定するというコミットメントに呼応したものである。
FDAのIT戦略では、「全ての人の健康を向上させるために、技術やデータの潜在力を解き放つ」をビジョンとし、「高い品質、安全な技術、データの能力を通して、公衆衛生を保護するために、ステークホルダーをエンパワーする」をミッションとして掲げ、図1のような目的と目標を提示している。
図1 米国食品医薬品局(FDA)のIT戦略における目的と目標 出所:U.S. Food and Drug Administration (FDA)「FDA Information Technology Strategy for FY 2024 - FY 2027」(2023年9月13日)
ここでは、IT戦略の目的として、以下の6項目を挙げている。
- 協力関係の強化:OneFDAエコシステムの構築と共有
- インフラストラクチャの強靭化:ITインフラストラクチャの現代化と安全化
- サービスの現代化:ITサービスの安定性と適応力に向けた最適化
- データの共有:効率とイノベーションの促進
- 人工知能(AI)とイノベーションの採用:最新技術の受け入れ
- 人材とリーダーシップの育成:技術の専門知識とリーダーシップの開発
HHS全体レベルでは、本連載第71回で触れたように、2021年1月24日、チーフAIオフィサーが「人工知能(AI)戦略」(関連情報、PDF)を公表し、同年9月30日には「信頼されたAI(TAI)プレイブック」(関連情報、PDF)を公表しているが、FDAのDX室が所管するIT戦略においても、信頼されたAI利用の流れが受け継がれている。
FDAのIT戦略のうち、「5.人工知能(AI)とイノベーションの採用:最新技術の受け入れ」では、以下のように、その目的を説明している。
探索をけん引し、AI、仮想現実など、最新の技術やトレンドが、FDAのITポートフォリオや規制業務に及ぼすインパクトに取り組む。FDAのミッションに対する機会とリスクをプロアクティブに特定し、責任のある技術利用を知らしめる。技術を活用し、インパクトに素早く対応するために、外部専門家とのパートナーシップを強化する。
その上で、以下の4つの目標を設定している。
- 政策と技術の価値のバランス:ビジネス価値を最大化する一方、AI戦略に関するガイダンスなど、技術の倫理的ガイダンスを開発する。技術的進化のインパクトや社会における意味合いを完全に理解するために、包括的な研究や分析を行うことによって、責任ある行動を保証する
- イノベーションの責任ある利用の保証:責任を持って、規制的なインパクトと有効なリスク対応戦略を理解しながら、AI/ML(機械学習)など、技術イノベーションを展開する。必要な箇所に、適切なガードレールを設定する
- プロアクティブなソート/リーダーシップの提供:ビジネスプロセス、業界、技術に関する深い理解を通じて、最新技術向けの斬新なユースケースを構築する際のパートナーとして先導する。業界の専門知識を活用し、協力関係を促進することによって、技術的進化の最前線にとどまる
- イノベーションの促進:業務効率化をけん引し、新たな能力を開発する際に、革新的なアプローチが奨励、特定、評価されるような利用環境を構築する。アイデア出しから投資に至るまでのイノベーションライフサイクルを管理する構造化されたプロセスを使えるイノベーションを生産するための選択(またはプロジェクト中止)に適用する
なお、FDAは、今後に向けてこのIT戦略に向けたFDAの投資を調整し、FDAの進捗状況に関する報告を行う際に、テクノロジービジネスマネジメント(TBM)・センター・オブ・エクセレンスが重要な役割を果たすとしている。
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