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米国政府のAI駆動型保健医療DX推進策とDFFTの関係性海外医療技術トレンド(103)(2/3 ページ)

本連載第23回や第65回で米国保健医療行政当局のIT戦略やDXを取り上げたが、データ駆動型からAI駆動型への進化に向けた動きが本格化している。さらに、日本が提唱してきたDFFT(信頼性のある自由なデータ流通)をも取り込もうとしている。

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AI医療機器関連ガイダンスの作成作業を加速させるFDA

 他方、医療機器規制に関連して、FDA傘下の医療機器・放射線保健センター(CDRH)は、2023年10月10日、2024会計年度に発行を計画している各種ガイダンスの一覧表および優先順位を示す「2024会計年度CDRHガイダンス提案」(関連情報)を公表した。

 FDAは、2021年1月12日に「人工知能/機械学習(AI/ML)ベースのソフトウェア・アズ・ア・メディカルデバイス(SaMD)行動計画」(関連情報)を公表し、同年10月27日には、英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)およびカナダ保健省と共同で「医療機器開発向けグッド・マシンラーニングプラクティス(GMLP):指導原則」(関連情報)を公表していた。

 また、本連載第80回で触れたように、2022会計年度の準備段階で、AIをはじめとする新技術利用に重点を置いた医療機器関連ガイダンスの作成と発行の方針を打ち出していた。2024会計年度ガイダンス提案においても、その後の進捗を反映させる形で、Aリスト(FDAが2024会計年度中に発行したい優先的な機器ガイダンス文書)の中に、以下のような文書が提案されている。

  • [ガイダンス最終版のトピック]
    • AI(人工知能)/ML(機械学習)が可能にする機器ソフトウェア機能向けに事前決定された変更コントロール計画の市販申請に関する推奨事項
  • [ガイダンス草案のトピック]
    • AI(人工知能)/ML(機械学習)が可能にする機器ソフトウェア機能:ライフサイクル管理の考慮事項と市販前申請の推奨事項

HHSが改訂版医療IT相互運用性最終規則にAI規制を追加

 HHS全体レベルでみると、オバマ政権時代に始まった「Meaningful Use」、トランプ政権時代に提言された「Promoting Interoperability(PI)」などの流れを受けた医療IT推進施策として、2023年12月13日、HHS傘下の国家医療IT調整室(ONC)が、「医療データ、技術、相互運用性: 認証プログラムの更新、アルゴリズムの透明性、情報共有(HTI-1)」最終規則(関連情報)を公表している。

 この最終規則では、HL7-FHIR、アプリケーションプログラミングインタフェース(API)など、本連載第44回で触れたAPIエコノミー主導型の医療IT相互運用性標準化/経済インセンティブ付与施策に関わる事項が多く規定されているが、併せて、バイデン政権下で発出された大統領令の目標達成に向けた項目も追加されている。その1つが、2023年10月30日に発出された、AIの安心、安全で信頼できる開発と利用に関する大統領令第14110号(関連情報)だ。大統領令第14110号では、HHSに対して、保健医療におけるAIを規制するために調整することを求めている。

 HTI-1最終規則では、アルゴリズムの透明性という項目が追加された。そこでは、認証済み医療技術で利用されるAIおよびその他の予測アルゴリズムに関して、「公平で、適切で、妥当性があり、有効で、安全であること(FAVES)」が求められる。開発者は、FAVES基準に関するアルゴリズムの評価をサポートするために、エンドユーザーに対して、ソース属性を提供する必要がある。規則は、学習データから関係性を導出するアルゴリズムまたはモデルに基づいた意思決定を支援する技術として、予測的な意思決定支援介入(DSI)を定義している。

 なおHTI-1最終規則は、2024年2月8日に施行される予定である。米国市場への参入/展開をめざす医療機器/デジタルヘルス企業は、早急に対応する必要がある。

責任あるAI活用を明記したHHSのデータ戦略

 2023年12月14日、HHSのチーフデータオフィサー(CDO)室は、「2023〜2028年HHSデータ戦略」を公表した(関連情報)。

 このデータ戦略は、人間のヘルスアウトカムを向上させるためのデータの管理と利用の促進によって、HHSのミッションを果たすことを目指している。それは、利用可能でアクセス可能な、タイムリーで公平な、意味のある利用が可能な、保護されたデータを思い描いており、HHSやそのパートナー、公衆が有効利用することが可能だとしている。また、患者のアウトカムを向上させ、米国連邦政府のがんムーンショットの目標を促進するとしている。

 2023〜2028年HHSデータ戦略は、以下のような構成になっている。

  • イントロダクション
  • ビジョン
  • 優先領域
    • 優先領域1:データ人材の育成
    • 優先領域2:データ共有の促進
    • 優先領域3:業務データのプログラム運用への統合管理
    • 優先領域4:保健福祉サービスのデータをつなぐことによる全人的ケア提供の実現
    • 優先領域5:責任ある人工知能の活用
  • ユースケース
    • ユースケースA:がんムーンショット
    • ユースケースB:準備とインシデント対応

 上記の優先領域については、HHSの現状および将来展望に関して、文献レビュー、ステークホルダーへのインタビュー、データ成熟度評価、ベストプラクティスのカタログ、HHSの全業務部門からの情報収集など、包括的な俯瞰分析を実施し、集中投資に向けた5つの優先領域を提示している。5つの優先領域に対して、以下のようなイニシアチブを設定している。

  • 1.データ人材の育成:
    現在および将来に渡ってHHSのデータ労働力のニーズを満たす
    • 1.1 労働力のニーズを満たすために、データ関連の職種の採用を向上させる
    • 1.2 スタッフのスキルを向上させ、データサイエンス能力を拡大する
    • 1.3 質の高いスタッフを維持する
  • 2.データ共有の促進:
    進歩をけん引し、ケアを向上させるために、HHS全体と外部パートナー向けに、信頼された、高品質で、使いやすいデータやメタデータを提供する
    • 2.1 HHSのデータリソースに対するスタッフの意識を向上させる
    • 2.2 データ共有同意書を簡素化する
    • 2.3 プライバシー保護技術を活用する
    • 2.4 複数回答データの妥当性とユーザビリティを向上させる
    • 2.5 データモダナイゼーションプロジェクトのベストプラクティスを複製する
  • 3.業務データのプログラム運用への統合管理:
    日常的なプログラム運用とあらゆるレベルの意思決定に、データを織り込む
    • 3.1 データ駆動型プログラム管理手法を開発し、展示する
    • 3.2 データのプラクティスコミュニティーを構築する
    • 3.3 データプロジェクトを支援するデータ専門家の集中型チームを構築する
  • 4.保健福祉サービスのデータをつなぐことによる全人的ケア提供の実現:
    全人的で家族的なウエルネスとニーズの視点をつくるためにデータを利用する
    • 4.1 投資、要求事項、政策のテコを合わせる
    • 4.2 データ標準規格を開発する
    • 4.3 相互運用性のパイロットを立ち上げる
    • 4.4 保健福祉サービスの相互運用性のためにHHSのオーナーを任命する
  • 5.責任ある人工知能(AI)の活用:
    安全で、倫理的で、責任のあるAI利用を通して、保健福祉サービスにおける品質、効率性、アクセス、アウトカムを向上させる
    • 5.1 保健・福祉サービスにAIポリシーを設定する
    • 5.2 ヘルスアプリケーションにおけるAIの品質と安全性を促進する
    • 5.3 保健医療における責任あるAI利用を促進するために、HHSの資金を活用する
    • 5.4 HHS全体に幅広いAI能力を展開する

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