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快適性をデザインする 〜快適性を保つエアコンの運転法〜1Dモデリングの勘所(27)(4/4 ページ)

「1Dモデリング」に関する連載。連載第27回は、ひとが感じる快適さを熱的視点で考え、モデル化、評価可能であることを示した前回の内容を踏まえ、快適性を具体的に評価するとともに、快適性のモデリングから分かったことを整理する。

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 図7に室内初期温度が15℃、外気温が10℃の場合のエアコンの回転数、室内温度、快適指標の時間変化を示す。

検証例1(室内初期温度15℃、外気温度10℃)
図7 検証例1(室内初期温度15℃、外気温度10℃)[クリックで拡大]

 このように、ひとの状況(活動指標、服装指標)が図1で定義したように変化しても、常に快適指標がゼロになるようにエアコンの回転数が制御されていることが分かる。

 図8に室内初期温度が10℃、外気温が0℃の場合のエアコンの回転数、室内温度、快適指標の時間変化を示す。

検証例2(室内初期温度10℃、外気温度0℃)
図8 検証例2(室内初期温度10℃、外気温度0℃)[クリックで拡大]

 このように、ひとの状況だけでなく、外気温度が大きく変化してもエアコンはうまく制御できていることが分かる。

 室内初期温度15℃、外気温度10℃のときの各部の熱量の時間変化を図9に示す。

各部の熱量の時間変化(室内初期温度15℃、外気温度10℃)
図9 各部の熱量の時間変化(室内初期温度15℃、外気温度10℃)[クリックで拡大]

 最初、エアコンは大量の熱量を発生させているが、部屋の温度が落ち着くとともに一定の値に近づく。ここで、重要なのはエアコンの供給熱量の多くが最終的には外部へ放出されていることである。この放出量は外壁の熱コンダクタンスに比例しており、外壁の断熱性能を向上させる(熱コンダクタンスを小さくする)ことにより、エアコンの供給熱量を下げることができる。

 室内初期温度15℃、外気温度10℃のときの、ひとの蓄熱量の内訳の時間変化を図10に示す。

ひとの蓄熱量の内訳の時間変化(室内初期温度15℃、外気温度10℃)
図10 ひとの蓄熱量の内訳の時間変化(室内初期温度15℃、外気温度10℃)[クリックで拡大]

 このように、ひとの活動指標、服装指標の変化、これを制御するようにエアコンから供給される熱量によって、ひとの体自体はさまざまな方法でバランスを取っていることが分かる。

 なお、今回は季節として冬を想定して検討を行ったため、結果としてエアコンは主に熱を供給する装置として機能している。一方、季節として夏を想定(外部温度が室内温度よりも高い)すると、エアコンは主に熱を除去する装置として機能する。具体的には、コンプレッサー回転数は(-)となる。実際には、回転方向が逆転するわけではなく、連載第21回で説明したように、四方弁によって冷媒の流れ方向を変化させている。 (次回へ続く

⇒連載バックナンバーはこちら

筆者プロフィール:

大富浩一(https://1dcae.jp/profile/

日本機械学会 設計研究会
本研究会では、“ものづくりをもっと良いものへ”を目指して、種々の活動を行っている。1Dモデリングはその活動の一つである。


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