センサーやAIの進化で難作業を自動化、ロボットの活躍の場はまだまだ広がる:MONOist 2024年展望(2/2 ページ)
製造現場に限らず、ますます深刻化する日本の人手不足。ただ、技術の進化によってこれまで人が行ってきた作業の自動化も可能になってきています。
進化するAIが縮める作業者とロボットの距離
AIの発展はこれまでロボット導入のハードルの1つだったティーチングの簡素化に貢献します。
デンソーウェーブでは、OpenAIの生成AI「ChatGPT」を活用した自然言語によるロボットプログラムの生成のデモも行いました。将来的には、ロボットプログラミングの経験は少なくても、現場での作業内容に精通している作業者が、高度なプログラムを作成することも可能になります。また、Cambrianビジョンシステムを活用したデモでは透明だったり、光沢があったりするワークの素早いばら積みピッキングを披露しました。このビジョンシステムは、ワークの3D CADデータをシステムにアップロードし、AIに学習させることで、従来の3Dビジョンが苦手だったこれらのワークのピッキングを素早く立ち上げることができます。
AIではありませんが、音声認識機能に活用した同社のデモンストレーションでは、事前に登録した音声コマンドによってロボットを操作することに成功していました。この取り組みも、作業者とロボットの距離を縮めるものです。
とはいえ、これまでロボットを扱ったことがない企業が、人材も時間も限られている中、自動化に取り組むのは周辺機器の調達、管理も含めて簡単ではありません。そんな中、三菱電機では、開発中のブロックコネクトセルを展示しました。これは、1200×1200mmを標準としたロボットセルで、ねじ締めなどの用途に応じてロボットとFA製品をパッケージ化するソリューションです。中小企業などを念頭に、ロボット導入のハードルを下げる試みです。
ここまでにあげたのは一部でしかありませんが、これまで人に頼ってきた難作業を本格的にロボットなどに置き換える下地が徐々に整ってきています。
自動化がもたらす生産性向上だけではない効果
以前、中小企業でもさまざまな壁を乗り越えて自動化に取り組み、成果を上げている企業を取材しました。
石川県でプレス加工などを行う有川製作所は従業員30人ほどの企業です。採用活動に苦戦していた中、アドバイスを求めて工場を見学してもらった女子大生から「まだ手で作っているんですか」と言われたことをきっかけに自動化に取り組み、外部の協力も仰ぎながら協働ロボットを導入。今では6台の協働ロボットがプレス加工や検査の工程で活躍しています。取引先からの評価が高まり引き合いが増加しただけでなく、採用活動も好転、さらに社風にも変化が生まれたといいます。
同社の自動化への道のりは「ITmedia Virtual EXPO 2024冬」でも紹介されますので、ぜひご視聴ください。
折しも、2024年1月10日、民間の経済人や研究者などの有識者らで構成する「人口戦略会議」が2100年を視野に入れた長期の人口戦略などを取りまとめた提言書「人口ビジョン2100」を発表しました。その中には『安定的で、成長力のある「8000万人国家」を目指す』とあります。それほどの落ち込みはもう避けられないという一面もあるのでしょう。
ロボット導入を含めた自動化といっても、現場の状況などに応じて進めなければならないのは当然です。ただ、技術の進歩はこれまであったハードルを確実に低くしてくれています。その中で、検討する企業側のさらに一歩踏み込む姿勢も求められるのも事実だと思います。
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